中国・北京市内の小学校の前で刃物を持った男が児童ら5人を切りつけた事件から、きょうで1か月です。相次ぐ無差別殺傷事件に、中国では今、住民の行動を監視する動きが強まっています。
記者
「登校の時間帯ですが、小学校の周りには、刺股などを持った人が等間隔に配置されています。周囲を警戒しているようです」
1か月前、事件が起きた小学校近くの交差点。大勢の警察官らが子どもたちの登校を見守っていました。50歳の男が児童3人を含む5人を切りつけた事件。動機などは今も明らかにされていません。
近所の人
「毎日、登校時と下校時には警備の人が増えました」
「(犯人は)誰かに不満を持っていたと聞きました」
ここ1か月、中国では無差別殺傷事件が相次いでいます。社会の動揺を防ぐため、中国政府は今、あるキーワードをもとに、市民への統制を強めています。それは…
記者
「事件を受けて警察が出した指示なんですが、『楓橋経験』という言葉が書かれています」
「楓橋経験」とは1960年代、毛沢東時代に行われていた治安維持のための運動です。住民をお互いに監視させ、治安維持にあたらせる。つまり、住民同士のトラブルやいざこざは大きくなる前に現場で解決せよという指示です。当時を知る住民は…
当時を知る住民
「当時はこの村は平和でした。何かトラブルがあったら村の中で解決していました」
しかし、行き過ぎた相互監視の結果、数千万人が密告などにより犠牲になったとされる「文化大革命」に発展したとの指摘もあります。
「楓橋経験」による監視強化は効果がない。こう指摘するのは元人権派弁護士の王全璋さんです。弱い立場の人たちの人権を守る弁護士として、長年活動してきた王さんは無差別殺傷事件が相次いでいるのは「景気の悪化により絶望する人々が増えたせいではないか」と見ています。
元人権派弁護士 王全璋さん
「(事件を起こす人たちは)死を恐れているのではなく、死を求めているのです。今の社会制度は絶望した人に希望を与えることができないので、彼らの感情が爆発してしまったのです」
そのうえで必要なのは監視の強化ではなく、社会的弱者を救済するシステムなのだと訴えます。
元人権派弁護士 王全璋さん
「セーフティネットがないから、一部の人は過激な手段で社会に復讐するのです」
相互監視の強化に突き進む中国政府。しかし、根本的な問題を解決しない限り、事件は防げないのではないか。そんな声が広がっています。
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