第一期トランプ政権が決断したINF全廃条約破棄のツケがいまアジアも脅かしはじめた?(2019年2月、ベルリンのINF全廃反対デモ)Paul Zinken/dpa
台湾有事に備えて日本にハイマース、フィリピンにミサイルを配備する米軍の緊急計画に対し、ロシアもアジアに相応の兵器を配備すると警告
アメリカがアジアで中距離・短距離弾道ミサイルを配備するなら、ロシアも同様のシステムをアジアに配備する計画があると、露セルゲイ・リャブコフ外務副大臣が明らかにした。
リャブコフは11月25日、国営タス通信に次のように述べた。
「これはもちろん、繰り返し触れられてきた選択肢のひとつだ。世界のどの地域であろうと、アメリカがそうした体裁を取るなら、我々が取るべき次のステップもおのずと決まる。軍事行動ならびに軍事技術による対応も含まれる」
「従来どおり、何が起きるかは、きわめて憂慮すべきこの危機的状況で、敵対勢力がどのような決断を下すのか、そして、どのような方向に向かうのかにかかっている」
日本の共同通信社は11月24日、米国が、中国と台湾の緊張が高まった場合に備えて、高機動ロケット砲システム「ハイマース」を運用する米海兵隊の「海兵沿岸連隊(MLR)」を日本の南西諸島に、ミサイル部隊をフィリピンに配備する緊急計画を策定していると報じた。リャブコフの発言の背景には、こうした状況がある。
また、米国のインド太平洋軍司令官サミュエル・パパロは11月19日、ワシントンD.C.のブルッキングス研究所で講演し、中国が2024年に入って実施した台湾侵攻を見据えた演習は、自分が軍人として目にしてきた中で最大規模だったと述べた。
「演習中は、152隻もの船舶が海上で展開した日もあった。(中略)中国が人民解放軍(PLA)の増強と近代化を進めるなかで我々が目にした最大の軍事演習だった」とパパロは述べた。
リャブコフは11月25日、ロシアが中距離・短距離弾道ミサイルの配備を一時停止するかどうかは、米国の動き次第だとも述べた。
さらにロシアは、最新式の極超音速中距離弾道ミサイル「オレシュニク」の配備について、何の制限も受けないと述べた。ロシアは先週、ウクライナ東部の都市ドニプロに向けてオレシュニクを発射した。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2024年7月、米国が2026年からドイツに中距離弾道ミサイルを配備すると決定したのを受け、もしそうなればロシアは、西側の射程内に向けたミサイルを配備すると警告していた。
プーチンは、7月28日にサンクトペテルブルクで演説した際に、「(米国がドイツに配備する)ミサイルには、将来的に核弾頭が搭載される可能性があり、わが国の領土内の目標までの到達時間はおよそ10分だ」と述べた。
「わが国は、米国、ならびに米国に追従する欧州や他地域の国々の動きを見ながら、ミサイル配備という対抗措置を講じることになるだろう」
プーチンは11月21日、2019年に当時のトランプ政権が中距離核戦力(INF)全廃条約を離脱したことは「過ち」だったと述べた。
タス通信によればプーチンは、「米国は2019年に、言いがかりのような理由をつけてINF全廃条約を一方的に破棄するという過ちを犯したと、私たちは考えている」と述べたという。
INF全廃条約は、冷戦末期の1989年、米国とロシア(旧ソ連)が署名した取り決めで、射程500〜5500キロメートルの地上配備型ミサイルを禁止したものだ。しかし、トランプ政権の一期目に、米国と北大西洋条約機構(NATO)は、ロシアが同条約に違反して核戦力を開発していると非難。その後、米国は2019年8月、同条約からの離脱を発表した。
(翻訳:ガリレオ)
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