アフガニスタンを支配するイスラム主義組織タリバン暫定政権とロシアが関係を強化している。25日にはロシアのショイグ安全保障会議書記が率いる政府代表団がアフガンの首都カブールを訪問してタリバン暫定政権高官と会談し、タリバンを自国のテロ組織指定から近く解除する方針を伝えた。双方とも欧米などの制裁に直面しており、経済や対テロ対策で協力を進める構えだ。
「アフガンの安定は、地域の繁栄と経済協力の推進にとって重要だ」。タリバンの発表によると、ショイグ氏はハッカーニ内相らとの会談でそう強調した。プーチン政権は2003年からタリバンをテロ組織に指定してきたが、ショイグ氏はタリバンを「(テロ組織の)リストから除外する最終段階にある」と説明した。その上で、貿易や資源の採掘、インフラ整備などの分野で協力を深めることで一致した。
21年8月にタリバンがアフガンの実権を掌握して以降、タリバンを正式に承認した国はない。ロシアもタリバン暫定政権を承認していないが、タリバンがロシアに派遣した外交官を信任するなど一定の関係を築いてきた。今年10月にはムッタキ外相がモスクワでラブロフ外相と会談するなどハイレベル対話も続けている。
経済危機に苦しむアフガンにとって、非欧米諸国との関係強化は不可欠だ。ロイター通信は5月、タリバンのアジジ商工相がロシア産原油などの輸出を念頭に、地域の物流拠点をアフガン西部ヘラートに建設することでカザフスタンとトルクメニスタンと合意したと報じた。また、タリバンはアフガンを経由して中央アジアと南アジアを結ぶ天然ガスのパイプラインを建設する計画の推進にも意欲を見せている。
過激派組織「イスラム国」の活発化を抑えたい思惑でも一致している。3月にモスクワ近郊のコンサートホールで起きた襲撃事件は、タリバンと敵対する過激派組織「イスラム国」(IS)の分派の「ISホラサン州」(ISーK)が実行したとみられている。ISは、22年9月にアフガンの首都カブールのロシア大使館近くで大使館職員2人を含む6人が死亡した自爆攻撃でも犯行声明を出している。
プーチン露大統領は7月、カザフスタンの首都アスタナで記者団に対し「タリバンは国内の実権を握っている。その意味でタリバンはテロとの戦いにおいて我々の同盟国だ」と述べた。【ニューデリー川上珠実】
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