米国の首都ワシントンで、人工妊娠中絶の権利擁護を訴えるデモ隊=2023年6月24日、秋山信一撮影

 米西部アリゾナ州の州議会上院は1日、1864年に制定された人工妊娠中絶の禁止法を無効化する議案を賛成多数で可決した。州下院は既に可決しており、同州のホッブス知事(民主党)が近く署名して成立する見通しとなった。レイプや近親相姦(そうかん)の被害者も例外としない厳格な州法で、州最高裁が4月に施行を認めた後に中絶容認派から激しい反発が起きていた。

 一方、南部フロリダ州では1日、妊娠6週より後の中絶を原則禁止する州法が施行された。バイデン大統領(民主党)は1日の声明で「多くの女性が妊娠に気づく前に生殖医療を禁止する過激な州法だ」と批判した。

 アリゾナ州上院での採決では、賛成16、反対14だった。民主党議員全員に加え、共和党からも2人が賛成に回った。禁止法が無効になれば、別の州法に基づいて妊娠15週より後の中絶が原則禁止される。

 ただ、米メディアによると、禁止法が無効化されるのは「州議会の会期末から90日後」との規定があるが、現会期が終わる見通しは立っていない。禁止法は6月下旬に施行開始となる予定で、一時的に中絶が禁止される可能性がある。

 同州の中絶禁止法を巡っては、中絶反対派の支持を受ける共和党からも「行き過ぎだ」(トランプ前大統領)との批判が出ていた。一方、中絶容認派は、禁止法の無効化だけでなく、住民投票によって中絶を合法化するよう求めている。

 同州の禁止法は1864年に慣例として成立した。母体の健康に危険がある場合以外の中絶は禁止され、中絶を手助けした医師らに禁錮2~5年の罰則を科す内容だった。1973年に連邦最高裁が中絶の権利を認める憲法判断を示し、施行が差し止められた。しかし、連邦最高裁が2022年6月に憲法判断を覆し、州による中絶禁止を容認。州最高裁が今年4月に州法の効力を認める判断を示していた。【ワシントン秋山信一】

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