テレビ演説で新型ミサイルをウクライナに向けて発射したことを認めたプーチン(11月21日、モスクワ) Sputnik/Vyacheslav Prokofyev/Pool via REUTERS

<2週間所在不明だったとも言われるプーチンだが、なぜかその両手がピクリとも動かない ── 発表クレムリンが発表した動画をきっかけに、プーチン大病説がまた噴き出した>

ロシア大統領府が公開したウラジーミル・プーチン大統領の動画でプーチンの両手が20分以上動いていないように見えることから、以前から流れていた健康不安説をもとに、オンライン上で憶測が飛び交っている。

【動画】プーチンの新型ミサイル発表映像は加工されていた? 「異変」は過去にもあった

2024年11月21日に投稿されたこの動画では、プーチンがウクライナへの攻撃に新型の極超音速中距離弾道ミサイル「オレシニク」を使用したことを確認。ロシアは「NATO諸国によるロシアに対する行動」に対応して、このミサイルの実戦でのテストを続けると付け加えた。

アメリカとイギリスの両政府は最近、ウクライナ軍がロシア国内の標的に対して、アメリカ製ATACMS長距離ミサイルとイギリス製ストームシャドー長距離ミサイルを使用することを承認したといわれている。

「われわれは常に平和的手段で全ての係争問題を解決することを好み、またその用意がある。しかし、事態のいかなる展開にも備えている」と、プーチンは動画で言った。

ロシアが極超音速兵器を配備したというニュースは世界中で話題となったが、プーチンがその使用を認めたこの動画は、別の理由でも注目を集めた。

「動画を早送りしてもプーチンの両手が動いておらず、体とは別個のもののように見える」と指摘したウクライナ内務省顧問アントン・ゲラシチェンコのX投稿は、150万回閲覧された。「音声と口の動きが一致しないところもある。どう思う?」

ゲラシチェンコは後に、「ロシアのボットと荒らし」から反応があり、それによって「確かに何かがある」と考えさせられた、とコメントした。

映画製作者のパトリック・ヘルシャーは、「プーチンの健康状態はもはや公に疑問視されるべきだ。ロシア大統領府の公式サイトで公開された最新の動画では、両手が安定しているように見えるよう加工した素人くさい編集の形跡がはっきりと見て取れる」と書いた。

「作り手は撮り直したり、きちんと修正する手間をかけなかった。フルHDの映像でそのまま残っている」

ヘルシャーは、元の映像を編集し、プーチンの手の部分は、別の映像が重ねられていることを強調した動画をあわせて投稿している。

この動画の発表前、プーチンはソチでの会議に出席して以来、2週間も公の場に姿を見せていないと報じられていた。

今年10月にプーチンが中央臨床病院を訪れた後、ロシア政府は急遽、プーチンに健康上の問題はないという声明を発表した。大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は、ロシアの国営通信社タスの記者に、プーチンは「通常の健康診断」を受けただけだと語った。

プーチンは以前にも、モスクワの病院で定期的に検査を受けていると述べていた。ロシア人にインフルエンザワクチン接種を促すことを目的としたテレビ会議で、「私が定期的にあらゆる検査を受けている中央臨床病院の医師たちも、国産のワクチン接種を推奨している」とミハイル・ムラシュコ保険大臣に語ったこともある。

プーチンの健康状態については、匿名の情報筋による噂や、手術や治療の報道、あるいは架空の作り話の可能性が高い情報など、長年にわたってさまざまな憶測が飛び交っている。

プーチンが「震え」と表現される手の動きを見せることについて、健康状態が悪化している兆候と解釈するコメンテーターもいる。

2022年4月には、プーチンがセルゲイ・ショイグ元ロシア国防相と話しながらテーブルを握りしめている動画をもとにした憶測が流れた。

作家で元英国議会議員のルイーズ・メンシュは、プーチンが病気を隠している可能性を指摘した自身の執筆記事へのリンクをX投稿し、ショイグの動画におけるプーチンの手の動きに注意を促した。

「追記:私の記事にあるように、ウラジーミル・プーチンはパーキンソン病を患っている。この動画では、手が震えないように彼がテーブルの端を握っているのがみえる。だが、小刻みに動く足は止められない」と、メンシュは書いている。

さらに2022年3月、メンシュはメルマガ配信サービス「サブスタック」で「イギリス政府と関係のある高官」に、プーチンが癌と診断されたという噂について尋ねたことを書いた。

「プーチンが癌を患っているかどうかはわからないが、パーキンソン病であることは確認できると言われた」と、メンシュは述べた。「さらに重要なのは、かなり急速に進行しており、プーチンは週に数回、主治医に相談しなければならないと聞いた」

「コワモテ」イメージの指導者にとって理想的な状態ではない。

「私たちの多くがフィラーやボトックスせいだと考えていた腫れぼったい顔は、実はパーキンソン病の治療に使われるステロイドのせいだった。おそらくプーチンは他人とかなり離れた席に座るため、他の人々はプーチンの手の震えを見ることができないのだろう」

だが、証拠がそれほど確実なものとはいえないことを考えると、プーチンの健康状態に関するあらゆる疑惑と同様に、ロシア政府がこうした憶測を認める可能性は極めて低い。

一部ソーシャルメディア・ユーザーの指摘によると、動画は確かに異常に見えるが、実際には、プーチンは動画の途中で手を動かしている。

Xユーザーの@heroniconicは、こう指摘する。「0:14の時点で小指が動いている(その後も手全体が動いているのが見える)。静止画像ではない。わざわざ、こんなひどい出来の偽造動画を作るより、ましなやり方があるだろう。これは映像があまりよくないというだけのことだ」

以前、本誌の取材に応じたロシアの専門家は、「プーチンが病気であるという確実な証拠は、一般にはまったく存在しない」と語っている。

ケント大学のリチャード・サクワ名誉教授(ロシアおよびヨーロッパ政治)は、2023年2月に本誌の取材に対し、「プーチンには常に医療チームが付いているが、それは純粋に予防的な観点からだ」と語った。

「私の考えでは、プーチンは2024年に再び出馬し、勝利する可能性が高い。今後数年間は、良くも悪くも、われわれと共にいることになるだろう」「プーチン重病説は、頭のおかしい人々が生み出すバカげた作り話だ」


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