米国旗=米首都ワシントンで2023年11月14日午後、西田進一郎撮影

 バイデン米政権は21日、ウクライナに侵攻するロシアへの追加経済制裁を発表した。液化天然ガス(LNG)輸出の決済を担うロシア3位の大手銀行「ガスプロムバンク」を制裁対象に加え、米金融機関との取引を禁じる。トランプ次期政権が発足する前にロシア経済に打撃を与える狙い。

 ルクセンブルクや香港、南アフリカなど海外に拠点を置くガスプロムバンク子会社の6金融機関も制裁対象に指定する。

 ガスプロムバンクは、ロシア国営の大手天然ガス会社「ガスプロム」傘下の銀行で、LNG輸出の際の決済を担う。ロシア軍兵士への給与支払いなどにも使われている。

 バイデン政権は、ロシア最大のズベルバンクなどの大手金融機関を制裁対象に指定済み。ただ、ガスプロムバンクを指定すれば、欧州や日本のLNG調達に支障が出る可能性があり制裁を見送っていた。

 だが、来年1月にはウクライナでの即時停戦を訴えるトランプ政権が発足する。新政権が発足する前に追加制裁を課し、露政府の戦費確保の手段となっているLNG輸出の抑制などを狙ったとみられる。

 イエレン財務長官は声明で「ロシアが違法な戦争支援のために利用するあらゆる金融ルートに断固とした措置をとる」と述べた。

 ロシアによるウクライナ侵攻後、欧州各国は米国などからLNG輸入を増やしたが、現在も一定割合をロシアから購入している。日本もロシア極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」でLNGを調達しており、追加制裁が欧日のエネルギー安定供給に支障を来す可能性がある。【ワシントン大久保渉】

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