これが公に見せた最後の姿?(11月7日、自ら立ち上げた有識者会議「バルダイ討論クラブ」で) MAXIM SHIPENKOV/Pool via REUTERS
<健康不安の再燃か、新型コロナのときのような猜疑心の暴走か、誰も行方を知らないプーチン最新の「引きこもり」は何を暗示するのか>
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が政権幹部や有力議員、財界人らと会談したというクレムリンの発表は、実は相当古い話ばかりだったと、ロシアの独立系ジャーナリストが暴露した。
会談後、何週間も経ってから公表されることもあると、元BBC記者で、ロシアのウクライナ本格侵攻後、独立してロシア情報を発信しているファリダ・ルスタモワが伝えた。
ロシア国外に拠点を置き、ロシアに関する調査報道を行なっている別の独立系メディア「ザ・インサイダー」も同様の情報を伝えている。
疑惑が本当なら、プーチンは11月7日にロシア南部のソチで開かれたプーチン肝入りの国際有識者会議、「バルダイ討論クラブ」の総会出席を最後に、公の場に姿を見せていないことになる。その事実確認も含めて、本誌はクレムリンにプーチンの動静についてコメントを求めている。
ルスタモワがメッセージアプリ・テレグラムに開設したロシアニュースのチャンネル「ファリデイリー」によると、プーチンが有力政治家や州知事、国有企業のトップらと会談してもすぐには伝えられないことはジャーナリストの間では「公然の秘密」だ。
独立系ジャーナリストらはこれを、情報の「缶詰」と呼んでいる。
クレムリンの情報操作には通常、プーチンが継続的に執務しているように見せかけ、健康不安など都合の悪い噂を払拭する狙いがあるとみられる。
こうした情報操作は以前から行われていたが、このところ特に頻繁に行われるようになったという。
「クレムリンは缶詰の消費期限を気にしなくなった」ようで、近頃では隠蔽がもろに露呈することさえあると、ファリデイリーは皮肉っている。
例えば、クレムリンは11月19日に公式サイトで、プーチンが野党・新人民党のアレクセイ・ネチャーエフ党首と会談したと発表した。それによれば、ネチャーエフは予算案を支持するとプーチンに約束したという。だがその予算審議は10月24日に終わっていた。
また、11月14日には野党・ロシア自由民主党のレオニード・スルツキー党首がプーチンに会い、統一地方選の結果を大統領に報告したという発表があったが、この選挙が実施されたのは2カ月前の9月だ。
与党政治家との会談でも、「辻褄が合わない」ことがあると、ファリデイリーは指摘している。クレムリンの発表では、与党「統一ロシア」のウラジーミル・ワシリエフ下院議員は11月12日午後3時にプーチンと会い、予算案の準備について話し合ったとされている。
この日ワシリエフは午後1時には連邦下院本会議で発言していたし、それ以前に、ワシリエフとプーチンが協議したという予算案は9月30日には連邦下院に提出されていた。
「最近では、身辺警護に当たる者とごく親しい側近を除けば、誰もプーチンがどこにいるか知らない」と、ファリデイリーは述べている。
ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領府報道官が11月19日の記者会見で核ドクトリンの改訂版はまだ準備できていないと述べたのに、クレムリンがその日のうちにプーチンは改定を承認したと発表し、世界を震え上がらせたことが何よりの証拠だ。
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