国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は14日、核開発疑惑が持たれているイランの首都テヘランを訪問し、エスラミ原子力庁長官らと会談した。AP通信などによると、グロッシ氏は記者会見で、中東での紛争などを念頭に「(イランの核問題を巡る)交渉や外交の余地は小さくなっている」と警告した。
イランは2015年に米英仏独露中との間で、核開発を制限する代わりに欧米の経済制裁を解除する「核合意」を締結したが、18年にトランプ米政権(当時)が一方的に離脱し、制裁を復活させた。これを受け、イランはウラン濃縮を加速。核開発は「平和目的」としつつも、今年8月17日時点で濃縮度60%のウランを推定164・7キロ保有しているとされる。
また、イランは10月下旬に受けたイスラエルの空爆に対する報復を検討しており、紛争が激化すれば、イスラエルがイランの核施設を攻撃する可能性も指摘されている。グロッシ氏は「イランとともに、緊張を和らげる解決策を見つけるために来た。成し遂げられると確信している」と述べたものの、具体策は見えていない。
イランメディアによると、イラン革命防衛隊のファダビ副司令官は13日、イスラエルに対して「後悔するような対応を取る」と語り、改めて報復を約束した。
イランでは7月、欧米との対話を通じて核合意の再建を目指すペゼシュキアン大統領が就任した。一方、来年1月に就任する米国のトランプ次期大統領はイランに対して強硬姿勢を取るとみられ、対立が激化する可能性が高い。
イランのアラグチ外相は14日、X(ツイッター)への投稿で、交渉による核問題の解決に意欲を示しつつも「圧力や脅迫の中で交渉する用意はない」と強調した。【カイロ金子淳】
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