イスラエル軍の激しい攻撃が続くガザに援物資は届かない(写真は、イスラエル軍の攻撃を受けたガザ地区中心部デイル・アル・バラフの難民キャンプ) Photo by Majdi Fathi/NurPhoto

<ガザ地区への人道支援を妨げているイスラエルに対して期限付きで改善を要求していたバイデン政権だが、このたび改善が見られたとして武器輸出の継続を発表。だが国際支援団体は悲惨な状況を報告している>

パレスチナ自治区ガザでの人道支援活動がイスラエル軍の妨害で困難になり、ガザの窮状も増している状況に対して改善を要求していたバイデン政権は、一定の改善が見られたとして、イスラエルへの武器輸出は従来どおり継続すると発表した。ただし、国際人道支援団体はガザ地区への人道支援は依然として厳しい状態にあると批判している。

バイデン政権は11月12日、イスラエルがガザへの人道援助活動を許可したため、状況は限定的ながら改善したと発表した。状況が改善しなければ削減すると言っていたイスラエルへの武器供与も、これまで通り継続することにした。一方、人道支援団体からの最新の報告書によれば、ガザの状況は、13カ月に及ぶ紛争のどの時点よりも悲惨なことになっている。

アメリカが軍事支援継続を発表したころ、ガザではイスラエルによる空爆で24時間の間に少なくとも46人が死亡した。医療関係者によれば、死者のなかにはイスラエルが人道支援区域として指定したエリア内の仮設食堂にいた11人も含まれている。

イスラエル軍はレバノンへの攻撃も続けており、12日にはベイルート南部郊外をはじめとする全土で18人が死亡した。

米国務省のベダント・パテル副報道官は記者団に対し、人道支援に対するイスラエルの姿勢は最近になって最近になって改善したとはいえまだ十分ではないし、継続しなければならないが、アメリカは「イスラエルがアメリカの法律に違反しているとは考えていない」と述べた。

「私たちはイスラエルに合格点を与えているわけではない」とパテルは述べた。「私たちは人道的状況の全面的な改善を望んでいる。こうした措置によって、今後も改善が進み続けることが可能になると考えている」

アメリカはイスラエルにとって最大の同盟国であり、最大の軍事援助国だ。国際人道支援団体がイスラエルはガザでの人道的アクセスの拡大を求めるアメリカの要求に完全に応えていないと述べているにもかかわらず、アメリカは武器輸出継続の決定を下した。

専門家は、ガザ北部の一部はすでに飢餓状態に直面している可能性がある、と警告している。(BBCの報道によれば、イスラエル軍が包囲するガザ地区で1日にトラック350台分が必要とされる支援物資も、まだ1日平均40台分ほどしか入っていない)。

バイデン政権は10月、ガザのイスラム組織ハマスとレバノンのイスラム過激派組織ヒズボラに対する攻撃を実施するイスラエルに対して、ガザへの食糧と緊急支援物資の輸送を大幅に増加させなければ、軍事援助を削減する可能性があると伝え、その期限を11月12日としていた。

国務省のマシュー・ミラー報道官は11月4日、ガザへの援助物資の輸送を改善するために示した条件に対するイスラエルの対応を「不十分」と批判。アントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官は連名で10月13日にイスラエルに書簡を送り、イスラエルが具体的な対応を見せなかった場合、アメリカは軍事支援を停止する可能性さえ示唆していた。

オックスファム、ノルウェー難民評議会、セーブ・ザ・チルドレンなど8つの人道支援団体が11月11日に発表した報告書によると、イスラエルはアメリカが求めた基準を満たしていなかった。

「イスラエルは、人道的対応への支援を示すアメリカの基準を満たせなかっただけでなく、特にガザ北部で、現地の状況を劇的に悪化させる行動をとった」」と、報告書は述べている。

たとえば、1カ月以上にわたって食糧の供給がほとんど途絶えているガザ北部では、イスラエル軍が援助を許可したにもかかわらず、国連は、援助物資の大半を届けることができなかったと報告した。ガザでは報道機関の独自取材をイスラエル軍が認めていないため実態はわかりにくいが、この地域の混乱とイスラエル軍による制限が支援物資の配給を妨げたようだ。

ガザ南部では、援助物資を積んだ何百台ものトラックが立ち往生している。国連によれば、略奪や無法行為の脅威など治安上の懸念や、イスラエル軍による制限のため、物資の運搬と分配ができない状態だ。


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