トランプ米次期大統領の政権を担う要職人事が11日、米主要メディアの報道などで相次いで明らかになった。トランプ氏は、自身が掲げる「米国第一主義」や不法移民の追放といった主要政策の実現のため、来年1月の就任に向けて着々と布陣を固めている。
外交・安全保障分野
外交・安全保障分野では、国務長官に共和党のマルコ・ルビオ連邦上院議員が起用される見通し。
また国家安全保障問題担当の大統領補佐官は、共和党のマイク・ウォルツ連邦下院議員に就任が打診された。ウォルツ氏は元陸軍特殊部隊員で対中国の強硬派として知られるほか、北大西洋条約機構(NATO)の防衛費増額も主張する。
ウォルツ氏は南部フロリダ州出身。陸軍特殊部隊「グリーンベレー」の元隊員で、アフガニスタンや中東などで軍務経験がある。
中国の覇権主義的な行動や軍備増強に対して強硬な姿勢を示すほか、NATOについては2月の声明で、加盟国が防衛費を増額する必要性を強調。一方、日本が防衛費を国内総生産(GDP)比2%まで増額すると決めたことを「世界的な脅威の高まりを理解している」と評価していた。
国連大使には共和党のエリス・ステファニク連邦下院議員を起用する。トランプ氏は声明でステファニク氏について「強く、タフで、賢い『米国第一』の闘士だ」と強調した。
ステファニク氏は東部ニューヨーク州の選挙区から2014年に当時女性として最年少の30歳で初当選した。熱心な「トランプ派」として知られ、今回の大統領選でも副大統領候補の一人に挙げられた。
穏健派としてトランプ氏が主導した減税法案などに反対した時期もあったが、弾劾訴追につながった「ウクライナ疑惑」などでトランプ氏を擁護する中で台頭。昨年10月に始まったイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘をめぐり、イスラエル批判を強める国連への資金拠出見直しを求めている。
不法移民対策の司令塔
第1次トランプ政権で上級顧問を務めたスティーブン・ミラー氏を、政策担当の大統領次席補佐官に起用する。ミラー氏は第1次政権でスピーチライターを務めるなど、トランプ氏の信頼が厚いとされる。看板政策になる不法移民対策で司令塔の役割を担うとみられるが、他の政策でも影響力を持つ可能性がある。
また国境管理の責任者には移民・税関捜査局(ICE)元幹部のトム・ホーマン氏が就任する。具体的な役職は不明だが、実務面での役割が期待されている。トランプ氏は「治安維持や国境管理で右に出る者はいない。不法移民の出身国への追放の責任者となる」と述べた。
トランプ氏は選挙戦で国境管理の強化に加えて、不法移民の国外追放を訴えてきたが、実態把握の難しさやコスト面などハードルもある。
環境規制は後退へ
環境保護局(EPA)長官には共和党のリー・ゼルディン元連邦下院議員を起用する。ゼルディン氏は「米国のエネルギー支配を復活させ、自動車産業を活性化させ、米国に雇用を取り戻す」とX(ツイッター)に投稿。経済活性化を重視し、バイデン政権の環境規制を大幅に後退させる考えを示した。
ゼルディン氏は11日、FOXニュースのインタビューで「多くの米国民にとって最大の問題の一つは経済だ。トランプ氏はEPAを通じて経済的繁栄を解き放つと話していた」と述べ、脱炭素など環境保護のための規制が米経済の足かせになっていると説明。「(政権発足から)100日間は、企業に苦境を強いる規制を巻き戻す機会となる」とも話し、規制の撤廃や緩和を進める考えを示した。
「左翼が提唱してきた規制は、企業を間違った方向に向かわせる原因になっている」とも述べた。【ワシントン秋山信一、大久保渉、ニューヨーク八田浩輔】
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