日本臨床救急医学会などは、自殺未遂や自傷行為によって救急搬送された約2千人のデータをとりまとめた報告書を公表した。20代女性が最多で、男女ともに過剰服薬(オーバードーズ)が多い傾向だった。国内初となる自殺未遂のデータ集積システムに基づき分析した。

 厚生労働省の自殺対策白書によると、自殺した人の約2割は過去に自殺を試みた経験があるなど、未遂歴は重要なリスク要因とされている。世界保健機関(WHO)は自殺未遂に関するデータを集積するシステムの構築を呼びかけていたが、これまで日本にはなかった。

 日本臨床救急医学会は、厚労相指定法人「いのち支える自殺対策推進センター」と協力し、自殺未遂や自傷行為によって救命救急センターに搬送された患者を症例登録するシステムをつくり、2022年から運用を開始。日本初の、全国的かつ継続的な取り組みとして、全国に304ある救命救急センターのうち57機関が参加している(昨年12月時点)。開始から約1年分のデータがこのほど、まとまった。

 報告書によると、22年12月~23年12月に登録されたのは1987人。男性が733人(36%)、女性が1254人(63%)だった。

 年齢別では20代が570人(28%)、30代が334人(16%)と多かった。男女別・年齢別に見ると20代女性が398人と最多で、10~20代では女性が男性の2倍以上だった。

 手段では、オーバードーズが最も多く、男性では297人(40%)、女性では858人(68%)だった。

 搬送後に入院したのは1571人(79%)、帰宅したのは237人(12%)だった。また、7割超が救急から精神科へ紹介されるなど専門的なケアにつながっていた。

 システム作りを主導する帝京大学医学部救急医学講座の三宅康史教授は「症例が集まれば、地域や時系列で分析することもできるので、今後も参加機関を増やしたい。将来的に自殺未遂者への支援や自殺対策につながれば」と語る。(松本千聖)

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