旧優生保護法(1948~96年、旧法)の下で不妊手術を強制されたのは憲法違反だとして、障害者らが国に損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁大法廷(裁判長=戸倉三郎長官)は3日、旧法を「違憲」とした上で、国に賠償を命じる判決を言い渡した。

 原告らが手術を受けたのは半世紀以上前で、20年が過ぎると賠償を求める権利が消滅する「除斥(じょせき)期間」をどう扱うかが焦点だった。最高裁は、旧法の違憲性も踏まえて、権利を消滅させるべきではないと判断。国に賠償責任があると結論づけた。最高裁が法令を違憲と判断したのは戦後13件目。

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 旧法は「不良な子孫の出生防止」を目的に48年に成立し、障害や特定の疾患がある人に強制的に不妊手術ができると規定していた。手術を受けた当事者ら39人が2018年以降、全国12の地裁・支部で提訴した。最高裁の裁判官15人全員で審理を担う大法廷は、札幌、仙台、東京、大阪の4高裁が先行して判決を出した5訴訟を審理していた。

 5件の訴訟の高裁判決は、いずれも旧法を「憲法違反」とした。だが、除斥期間については4件が「適用して原告らの権利を失わせることは著しく正義に反する」などとして国に賠償を命じる一方、1件は除斥期間を適用して原告の賠償を求める権利はすでに失われたと判断。結論が割れた除斥期間の適用の可否が最大の争点だった。

同種訴訟、被害者救済に道

 判決に先立って、大法廷は5月29日に弁論を開いて、原告側と国側の双方の意見を聞いた。

 弁論で国側が「除斥期間により賠償請求権は消滅した」と主張したのに対し、原告側の弁護団は「戦後最大の人権侵害が20年過ぎただけで無罪放免になるのか」と、除斥期間の適用をすべきではないと主張していた。

 強制不妊手術をめぐっては、5件以外にも各地の地裁や高裁で訴訟が続いている。今回の判決で最高裁が「時の壁」を越えて原告らを勝訴とする判断を示したことで、同様の事情にあるほかの原告たちも救済される道が大きく開けた。

 強制不妊手術の被害者はいずれも高齢で、弁護団は国に対して一刻も早い全面救済を求めてきた。司法の最終的な結論を受けて、国がどんな対応を示すのかが次の焦点だ。

 法律が合憲か違憲かの最終判断を担う最高裁が旧法を違憲と宣言したことで、旧法のもとで強制不妊手術を推し進め、旧法の廃止後も長く被害補償に後ろ向きだった国の姿勢が、改めて問われる。(遠藤隆史)

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