アレルギー疾患が原因で、就労や就学に支障が出て悩む人たちがいる。不自由さを抱えながら誰にも打ち明けられず、離職や不登校につながるケースもある。そうした人々が職場や学校で適切なサポートが受けられる仕組みをつくろうと、厚生労働省が2023年度からモデル事業を始めた。総合アレルギーセンターを持つ藤田医科大ばんたね病院(名古屋市)も、実施法人の一つ。取り組みを取材した。(長田真由美)

◆原因物質が含まれないこと、確認しているのに…

 愛知県大府市在住の女性(26)は小麦、乳、卵、ナッツ類、そば、貝類などに食物アレルギーがある。加熱していないと甲殻類や豆乳、トマト、リンゴ、バナナも食べられない。気管支ぜんそくもあり、ばんたね病院に通院している。

どんな食物アレルギーがあるかが分かるように、女性がスマホに書いているメモ

 医師の事務的サポートをするメディカルアシスタントとして、別の病院に勤務。ただ、症状が突然出ると、治療のため急に休むことになるのが悩みだ。  昨年10月にはみたらし団子を食べて、かゆみや声がれの症状が出た。アレルギーの原因物質が含まれていないことを確認して口にしたが、同じ工場で五平もちを作っていて、ナッツ類が含まれていた可能性がある。「病院に2日入院し、仕事も休まざるを得なかった」と振り返る。主治医と相談して、両立支援のサポートを受けることになった。  ばんたね病院では昨年7月、総合アレルギーセンターを中心に、治療と仕事・学業の両立支援チームを立ち上げ、9月から運用を開始。愛知県のアレルギー疾患医療拠点病院としての専門性を生かし、アレルギー診療の経験豊富な医師、医療スタッフ、両立支援コーディネーターら9人ほどでチームを構成する。

◆モデル事業で患者や家族ら10人ほどサポート

 センター長の矢上晶子さんは、「以前から医師は患者に寄り添えているか、その後のフォローアップはできているのかということが気になっていた」と話す。患者の日常生活は学校や職場にある。例えば職場に産業医がいても、主治医とつながっているわけではない。その後の様子を追うことが難しかった。  両立支援チームは、患者の診療情報や生活状況、学校・職場環境などの情報を総合的に検討し、両立や継続できる最適な支援内容を決める。食物アレルギーの女性の場合、この2年ほどアレルギーの症状が悪化したため昨年5月、常勤からパート勤務へと就労形態を変えた。ただ、仕事が好きなので、再び常勤に戻れたらという思いがある。両立支援コーディネーターはその思いを聞き取り、チームで検討。アレルギーの症状が出ないよう、チームが体調管理をしていくこと、今後は勤務先ともやりとりをして、職場環境を整えることなどを確認した。  モデル事業では、子どもが食物アレルギーなどで通院するため、仕事が制限されている保護者も対象となるのが特徴。ばんたね病院では今年3月までに、患者や家族ら10人ほどのサポートを見込んでいる。矢上さんは「アレルギーで悩んでいても、社会の支援があると活躍できる。一人一人に丁寧に寄り添いたい」と力を込める。 

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