岡崎市民病院(愛知県岡崎市)は20日、骨肉腫の経過観察で来院した50代の男性について、腫瘍(しゅよう)が気管支に転移していたのに主治医がX線写真で見落とし、適切な治療を受けられずに死亡した、と発表した。損害賠償を求められた市は、医療過誤と認め、350万円を支払うことで遺族側と和解したという。関係議案を12月市議会に提案する。

 病院によると、同県豊田市に住む50代の会社員男性は、左大腿(だいたい)骨の骨肉腫で2014年に別の病院で手術を受け、その後、主治医が市民病院に移ったことから、19年から年に1回程度、同院を訪れていた。22年5月、経過観察のため胸のX線写真を撮ったが、主治医は腫瘍の転移により肺の一部が縮んでいることに気づかず、同年6月に体調不良を訴えた男性が豊田市の病院に入院してCT検査をしたところ、腫瘍による呼吸不全と判明。7月に岡崎市民病院に転院した。

 見落としのほか、同院の主治医は状態が悪化した場合の措置などを十分説明しないまま、男性は退院し在宅の酸素療法に移行。3日後の7月13日、症状が悪化した男性は自宅で死亡した。

 小林靖病院長は「適切な対応をしていれば、もう少し命をつないだり、患者が苦しまない緩和措置を講じられたりした可能性がある」と述べて過誤を認めた。その上で、「X線写真を1人の医師のみで見ることは、現状では規則違反などではないが、今回の件を踏まえ、専門の医師と一緒に見たり、カルテに記録を残したりする改善を進めたい」と述べた。(前島慶太郎)

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