(写真:sasaki106/PIXTA)

スタートアップ企業は新たな事業を生み出し、産業競争力を向上させる重要な存在だ。しかし、新規事業を展開するためには多額の資金が必要となる。

こうしたスタートアップ企業の成長を支えようとしているのは、国やベンチャーキャピタル(VC)だけでなく、地方自治体もある。たとえば都道府県は自らの地域の未来を支えていく優良企業を育成するために、事業名や用途はさまざまだが、支援制度を充実させている。

東洋経済オンラインでは、2024年度の一般会計当初予算に含まれるスタートアップ支援関連の事業予算を、都道府県のホームページで公表されている資料から独自に取得し、その金額合計でランキングを作成した。

ランキングはあくまでも独自集計。各自治体の公開基準が統一されていないため、すべての情報を取得できていない場合があるほか、スタートアップの支援金額として総額に組み入れてよいものか、線引きが難しいものもあった。

人口が多く歳入が潤沢な地域が上位に

ランキング記事後半には、総額を含めた各支援策ごとの金額も公開している。支援内容や金額の詳細はこちらも参考にしてほしい。支援施設が不足している地域では、まず支援拠点となる施設を作り、スタートアップ企業と関係者の交流促進を図る、その後にイベント開催や支援を充実させるという流れが一般的なようだ。

スタートアップ企業にとって自治体の支援獲得は難しいが、さまざまな支援策を見比べることで、より自分たちにあった支援を提供している自治体と出会える場合もあるだろう。

やはり人口が多く歳入が潤沢な地域ほど上位にランクインした。ランキング1位は東京都で、232億円と圧倒的な規模を誇っている。東京都の支援策には、ファンドへの拠出を目的としたものもある。女性起業家等の支援や女性活躍推進に役立つビジネスを展開するスタートアップ企業支援を目的とした新ファンドへの40億円(ファンド総額では80億円)、官民連携のインパクトグロースファンドに100億円(ファンド総額では300億円)といった事業だ。

また、東京都のスタートアップ支援関連の事業予算には、有楽町駅前に5月に本格的にオープンする支援施設「Tokyo Innovation Base」の運営費24億円なども含まれている。同施設は、スタートアップ企業と多様な関係者をつなぎ、アジアの諸都市に比べても後れをとっているスタートアップ企業の創出を目指している。

愛知県や山梨県は独自のスタートアップ支援施設で追随

ランキングの2位には愛知県が入った。官民共同で実施する「STATION Ai」のプロジェクトに対する費用が大きくなっている。STATION Aiプロジェクトは、名古屋市内に2024年にオープン予定のスタートアップ支援施設のこと。国内外のスタートアップ支援機関や大学、企業と連携して、オープンイノベーションの促進を図る計画となっている。

合計予算128億円のうち、STATION Aiに108億円をかけているため、この金額を差し引くと約20億円規模となり、3位の大阪府との距離は近くなる。

3位の大阪府は2025年に開催予定の大阪・関西万博と連動した施策が目立つ。例えば、「空飛ぶクルマ都市型ビジネス創造都市推進事業費」として計上された、3億9000万円の支援などがあげられる。万博でも活用する予定の空飛ぶクルマの離発着場の支援や、飛行実証に必要な経費の補助などを行うものだ。

東京都や愛知県などの大都市圏だけでなく、スタートアップ支援施設に取り組む都道府県がある。2025年度中を目指して整備を進めている山梨県だ。山梨県立青少年センターの本館の改修をおこなう形で整備を進めており、今年度は12億円余りの予算を組んでいる。この結果金額規模は膨らみ、東京、愛知、大阪に次ぐ4位にランクインした。

いくつかの自治体は、スタートアップとVC、民間企業等の関係者が一同に会する大規模スタートアップイベントの開催に予算を確保している。京都府は夏に開催予定のIVSという大型イベントの実行委員会に、また静岡県も夏に開催予定のTECH BEAT Shizuokaというイベントの実行委員会に入っている。東京都もSusHi Tech Tokyo 2024のプログラムの一環で有明でグローバルイノベーションカンファレンスを開催する予定だ。

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