公益財団法人「産業雇用安定センター」が運営し、60~70歳までの再就職を無料で支援する「キャリア人材バンク」の利用者が県内で急増している。2023年度の登録は94人、雇用の成立数は45人で、いずれも前年度の約3倍だった。定年退職の年齢を迎えても就労を希望する人と、深刻化する人手不足の中で働き手を探す企業との橋渡しを担う。(政経部・銘苅一哲)

 産業雇用安定センターは円高不況により輸出業や製造業で雇用が不安定だった1987年に労働省(当時)や日本経営者団体連盟などが協力し、就職支援の公的機関として設立された。各都道府県事務所のネットワークで企業間の人材のマッチングを支援する。沖縄事務所も99年に開設されたが、県内では製造業が少なく、認知度は高くなかった。

 キャリア人材バンクは2016年に全国でスタート。県内は実績が少ない状況が続いたが、ハローワークなどと連携して周知に務め、人手不足を背景に利用者は増加している。

 人材バンクが対象とする年齢層は60~70歳で(1)在職中に再就職を希望(2)退職後1年以内に再就職を希望-する人が登録できる。

 利用者は保有資格や過去の職歴、希望収入などの情報を登録し、企業側はデータの中から雇用したい人材を選ぶ仕組み。23年度に再就職した45人のうち「事務的職業」が最も多い53%で、「調理・調理補助・見習い」が11%、「警備・保安」が9%と続いた。

 センターでは6人の支援員が履歴書の書き方や面接対策などを一対一でサポートする。いずれの支援員も金融機関や航空会社など民間企業からの出向者で、民間ネットワークを生かしマッチングを進める。

 神谷達也所長は「定年後もセカンドキャリアを希望する人は多い」と制度の意義を強調する。阿嘉宗弘統括参与は「企業側も人材不足をシニアの労働力で補おうとする動きがある」と話し、社会保険労務士や商工会などとの連携を広げたい考えを示した。

 問い合わせは那覇市松山の沖縄事務所、電話098(860)0750。

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