福岡県福智町は、日本酒の製造技術をベースに、果物やハーブなどを副原料に使う新ジャンル「クラフトサケ」の醸造所を町内に建設することを明らかにした。完成は2025年3月の見込み。経営は、酒蔵の経営支援などを手掛ける「オープンゲート」(東京都品川区)の中山雄介社長が出資した新法人が担う。町は23年秋に事業者を募集していた。
クラフトサケは、新規参入者への日本酒の製造免許交付が一部の特例を除き認められないことを背景に誕生した。その製法から酒税法上は「その他の醸造酒」に分類され、日本酒より免許が取得しやすい。副原料を使うことで多彩な酒が続々と出ており、22年にはクラフトサケの業界団体も設立された。
かつて炭鉱で栄えた福智町は現在、農業にも力を入れており、日本酒蔵と特産の焼き物「上野焼(あがのやき)」の酒器を組み合わせた振興策を考えたが、製造免許のハードルが高く断念。そこにクラフトサケを通じて町おこしを進める「稲とアガベ」(秋田県男鹿市)の存在を知り誘致を決定。23年10月から募集し、3件応募があった。
醸造所の建設資金は、地方スタートアップを支援する総務省の「地域経済循環創造事業交付金(ローカル10000プロジェクト)」のほか、中山社長の自己資金や調達資金で大半を捻出する。福智町出身の中山社長は「酒造りを起点に町おこしにつなげて、地元に恩返しをしたい」と意気込む。
町には特産の梨やイチゴなどクラフトサケの副原料候補がそろう。町の担当者は「建設予定地にはレモン畑もあるので、有効活用して農業振興につなげていきたい」と話した。【植田憲尚】
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