病気の状態などを調べるCTやMRIといった画像診断装置で、人工知能(AI)を活用する動きが広がっている。診断の精度は年々向上しており、医師のサポートや患者の負荷軽減にも貢献している。医師や看護師に残業時間規制が導入され、医療現場は「2024年問題」に直面。医療機器メーカーは一層、AIで作業を効率化できる技術の開発を強化している。
画像を見やすく
横浜市西区のパシフィコ横浜で12日、最新の医療画像機器などを公開する「国際医用画像総合展」が開幕した。国内外の約130社が出展し、多くの医療関係者が来場した。
キヤノンメディカルシステムズ(栃木県大田原市)は最新のX線血管撮影装置を展示した。この装置は心筋梗塞や脳動脈瘤(りゅう)の患者の血管内にカテーテルと呼ばれる細い管を挿入し、造影剤を注入しながら、X線を照射して内部の様子をチェックする際に使われる。
これまでは画像のざらつきのように見えるノイズが発生し、冠動脈が見えにくくなることもあった。AIに学習させることで、リアルタイムで画像を処理できるようにした。
この技術で診断の確度が高まり、治療の効率化も進んだ。滝口登志夫社長は「(現場は)働き方改革で時間がない。効率良く答えを出さないといけないものに応えたい」と話す。
体の動き再構成
富士フイルムヘルスケア(東京都港区)も、患者の負荷を軽減する最新のMRIを展示した。MRI検査は閉塞的な空間で長時間、同じ体勢を維持する必要がある。患者が痛みやせきなどで動くと、再撮影せざるを得なくなる。
そこで2つのAIカメラで患者の体の動きを詳細に検知する機能を開発。患者が動いても、その時のデータをAIが自動で取り外して画像を再構成し、また撮影をしなくても済むようにした。「再撮影の時間が減り、放射線技師は計画通りに作業を進められる」(担当者)。
協業で実装加速
一方、東大発のベンチャーで、診断支援AIを手がけるエルピクセル(東京都千代田区)は社会実装を加速させるため、他社との協業に力を入れている。9日にはオリンパスと内視鏡を使った胆のう摘出手術向けのAIシステムの共同開発に合意した。展示会でも積極的に他社に協業を呼びかけていた。(黄金崎元)
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