おいしくご飯を冷凍する「極意」をご紹介!(写真:筆者撮影)この記事の画像を見る(5枚)毎日食べる「ご飯(米飯)」。ご飯を冷凍保存されている方は多いと思いますが、「余ったからとりあえず冷凍する」方や、「これで正解か自信がない」方も多いと思います。「冷凍食品専門家」「冷凍生活アドバイザー」として活動し、『いますぐ食べたい!冷凍食品の本』や『冷凍王子の冷凍大全』などの著書のある“冷凍王子”こと西川剛史さんが、ご飯のおいしさをキープする冷凍術の極意を紹介します。

皆さんは普段、炊いたご飯をどうやって保存していますか? 冷蔵、炊飯器、冷凍……と、家庭によってさまざまだと思いますが、ズバリ、ご飯を最もおいしく保存できる方法は「冷凍」なんです。

単に長期保存ができるだけではなく、おいしさもキープできるのが冷凍の良さです。

ご飯がマズくなる理由はコレだ!

その理由は、ご飯に含まれるでんぷんにあります。

でんぷんとは、簡単に言ってしまうと、ご飯のおいしさの決め手である甘さや粘り、食感のもと。お米のでんぷんは水分と一緒に加熱(炊飯)することで、もちもちとやわらかく、消化しやすくなります。

この現象を「糊化(こか)」または「α(アルファ)化」といい、糊化されたでんぷんの状態を「αでんぷん」と呼びます。この状態がキープされると、おいしさが保たれます。

反対に、ご飯は冷めていく過程で水分が飛び、でんぷんが「老化/β(ベータ)化」すると、味が落ちていきます。

でんぷんの老化が最も起こりやすいのが0〜5℃で、冷蔵庫内はまさにこの温度。ご飯を冷蔵保存するとおいしくないのは、こういう理由なのです。

では、炊飯器での保温なら大丈夫かというと、やはり保温し続けることで水分が飛んでご飯が硬くなり、風味も飛んでしまいます。さらに、炊飯器のフタの開閉で水分が湯気となって蒸発するため、何度もフタを開け閉めしていると、どんどんおいしさが失われていきます。

この点、冷凍保存はご飯の水分を保持したまま凍らせるので、パサつかず、かつ味が落ちにくいのが特長です。

冷凍ご飯がおいしい科学的理由

ここで、冷凍ご飯のおいしさの秘密を調べた実験データ(旭化成ホームプロダクツ調べ)をご紹介しましょう。

ご飯のおいしさの指標は「α化度」で見ており、炊きたてが100%。24時間冷凍した後に常温解凍したご飯は81.7%、再加熱したご飯は97.6%になります。

4週間冷凍したものでも再加熱をすれば98.6%に復活。炊きたてと変わらない状態に戻ります。冷凍で長期保存したあとでも、再び加熱をして解凍するのがポイントです。

(画像:旭化成ホームプロダクツ提供/一般社団法人食品冷凍技術推進機構 鈴木徹代表理事監修)

さらに同実験において、ご飯に含まれる水分量を調べてみると、炊きたては水分量が59.8%で、冷凍24時間後は60.4%、冷凍4週間後は57.8%でした。冷凍することで、4週間後もほぼ炊きたてと同じ水分量がキープできていました。

ご飯のおいしさには、水分量がかなり重要なため、これだけキープできていることは冷凍の良さです。

冷凍してもご飯がやわらかい

また、ご飯のやわらかさもおいしさのポイントの1つ。炊きたては7.2ニュートン(ニュートンは力の大きさを表す指標)、冷凍4週間後は7.4とほぼ変わりませんが、冷蔵24時間後は9.1、炊飯器保温24時間後は8.5です。数値が高い=硬いので、冷蔵や炊飯器保存をすると、ご飯が硬くなってしまうのです。

(画像:旭化成ホームプロダクツ提供/一般社団法人食品冷凍技術推進機構 鈴木徹代表理事監修)

以上の結果から、ご飯を冷凍保存すると、水分量とやわらかさがキープされるうえ、加熱による解凍によってα化度もキープでき、おいしさが保てることがわかりました。

ここまでは「なぜご飯は冷凍したほうがいいのか」についてご紹介しましたが、冷凍の仕方も実は大事な要素です。何も考えず適当に冷凍するだけではダメ。ここは押さえておきたいポイントなので、よーく聞いてくださいね。

「余ったご飯を冷凍」はダメ!

まずは「余ったご飯を冷凍する」という考えを捨てること! 炊きたてを冷凍することで、ベストな水分状態と香りを守ったまま保存できます。

炊きたてというのは炊飯器の炊き上がりの音が鳴った、そのときです。炊き上がりをすぐに冷凍するだけで、かなりおいしい冷凍ご飯を作ることができます。

炊飯器の中でしばらく放置してから冷凍すると、保温中にご飯の水分と香りが飛んでしまうので、冷凍したときにパサついたり風味がなかったりしてしまいます。とにかく「炊き上がったらすぐ冷凍」をぜひお試しください。

急速凍結機能のスペースがあれば、炊きたてのご飯でも入れられるので、ぜひ利用を!(写真:筆者撮影)

炊きたての熱々のご飯を、すぐに冷凍庫に入れてもいいの?と疑問に思われるかもしれません。

しかし、粗熱を取っている間においしさは逃げてしまうので、なるべく早く冷凍庫に入れ、短時間で凍らせるのがおいしさキープの秘訣です。

炊きたてのご飯を冷凍するのに便利なのが、最近の家庭用冷蔵庫に搭載されている「急速凍結機能」です。そこで粗熱を取りながら素早く凍らせたら、冷凍庫に移して保存します。

冷蔵庫にこうした急速凍結機能がない場合は、ご飯の上下や周りに保冷剤を置いた状態で冷凍庫に入れましょう。ただし、冷凍庫に入っている冷凍品への影響を考えると、少し味は落ちますが、やはり粗熱をとってから冷凍庫に入れたほうがいい場合もあります。

また、冷凍する際は保存容器やラップを使用する人が多いと思いますが、筆者のおすすめは保存容器のほう。最近は冷凍保存ができ、そのまま電子レンジにかけられる冷凍ご飯専用容器が販売されています。ご飯の冷凍のことを考えて作ってあるのでおすすめです。

ご飯をふんわり入れることができ、電子レンジによる加熱ムラが減り、容器のまま温められるので手間もかかりません。

大事なのは、保存容器でもラップでも、ふんわりと盛ること。しゃもじで押さえつけたり、手でぎゅっと固めてしまったりすると、ご飯が潰れてしまい、おいしさが損なわれてしまいます。「やさしくふんわり盛る」がポイントです。

ラップの場合は、ラップに平たくご飯を置き、ご飯を潰さないように注意しながら、ラップで水蒸気ごと密閉するイメージで包みましょう。包んだあとに、ぎゅっと手で押さえないように注意してください。

さらにそれを冷凍用保存袋に入れ、冷凍庫へ入れることで、保管中の乾燥・酸化を防ぎます。

他の食材に比べれば、ご飯は冷凍耐性があり、もとの状態に戻りやすい食材のため、冷凍向きな食材だといえます。冷凍保存後は1〜2カ月を目安に食べ切るようにしましょう。

ご飯の解凍はレンジ一択

続いて解凍のポイントをご紹介します。

ご飯の水分をしっかり残した状態で冷凍しておき、解凍の際に一気に全体を加熱することで、炊きたてのおいしさを再現できます。そのためには電子レンジによる加熱が最適です。

解凍するときにも、でんぷんの老化が進みやすい温度である0~5℃を通る時間が長くなると、おいしさが落ちます。そのため、ご飯の自然解凍はNG。時間をかけて解凍すると、どんどん老化が進みます。

ご飯は凍ったまますぐに電子レンジにかけて、一気に加熱を。容器のフタやラップで包むことも重要。蒸すように全体を均一にスピーディーに解凍します。

そのためには大きな塊で冷凍するのではなく、解凍しやすいように小分け(1食分ずつ)にしておくことも大切です。

電子レンジにかける時間は、レンジの種類や強さ(ワット数)、ご飯の量によって変わるので、最初はオート機能で試し、そこから適切な時間を見つけてください(そういう意味でも、常に同じ量・同じ形で冷凍できる保存容器のほうがおすすめです)。

おにぎりの冷凍も可能ですが、いくつかの注意点があります。

1つ目は、炊きたてのご飯で作ること。

2つ目は形。同じ厚みで平らな座布団形にすると、電子レンジで解凍するときにムラになりません。一般的な厚みのある三角形や丸っこいおにぎりだと加熱ムラができやすく、中まで加熱しようとすると表面部分がパサパサになったり、ベタッとしたりと、おいしく仕上がりません。

厚さの目安は2センチくらい、大きさは約7センチ角程度がおすすめで、これは白いご飯をラップで冷凍するときも同様です。

3つ目は保存方法。ラップに包んだおにぎりは、冷凍用保存袋に入れて冷凍します。乾燥を防ぎ、水分や風味を逃しません。

ムラなく解凍できるざぶとん形。ラップで包み、さらに保存袋に入れることでおいしさをキープ(写真:筆者撮影)

それでは、ポイントがわかったところで、筆者がよく作る「カニカマとねぎの冷凍おにぎり」のレシピをご紹介しましょう。

【材料1人分(おにぎり2個分)】
ご飯 200グラム
カニカマ 30グラム
小ねぎ 20グラム
しょうゆ 小さじ1

【作り方】
①カニカマは5ミリ幅に、小ねぎは小口切りにする。

②ボウルにご飯と①としょうゆを入れ、しゃもじでしっかり混ぜる。

③ラップの上に②の半量をのせて四角く整え、厚さ約2センチ、約7センチ角の座布団形に包む。これをもう1つ作る。
④③を冷凍用保存袋に並べて入れ、ジッパーを閉めて冷凍保存する。

食べるときはラップをはがし、耐熱皿に冷凍おにぎりをのせて、ラップ(使っていたものでOK)をふんわりかぶせて、電子レンジ(500W)で1個につき2分20秒加熱。

温度ムラをなくし、手で持つことができる温度にするため、加熱後そのまま1~2分置けばでき上がりです。


炊き込みご飯も冷凍できます。油分や糖分を含むため、より水分を閉じ込める作用が高くなるので、冷凍に向いています。

「冷凍ご飯貯金」で食事をラクに!

冷凍ご飯をストックしておくと、帰りが遅くてご飯を炊けない日にも重宝しますし、家族の食事タイミングにあわせてレンチンできるので、便利。

また、決まった保存容器で冷凍しておけば、いつも同じ量のご飯を食べられるので食べすぎ防止にもなり、健康づくりにもプラスに働きますよ。

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