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ユニクロを展開するファーストリテイリングの決算が10日に発表され、売上高が初めて3兆円を超えました。ユニクロの1号店がオープンしたのは40年前。地方で創業した小さな企業が世界有数のグローバル企業に成長したこの40年は、日本の経済が停滞していた時期と重なります。10年ごとに売上を3倍に増やしてきた柳井正会長兼社長(75)にインタビューしました。マイナス思考に陥りがちな今の日本社会への直言です。

■売上高3兆円突破“成長企業”

大越健介キャスター
「柳井さんのことを書かれた本は読む機会があるんですけど、テレビで拝見したことはあまりなくて」

柳井正氏
「もう出ないようにしている。なんか面白おかしく取り上げる。僕自身が怒っている写真ばっかり」

大越健介キャスター
「ちょっと怖い人という印象がどうしてもついちゃって」

柳井正氏
「本当はそうかもしれないですけど」

売上高が3兆円を超えたファーストリテイリング。世界のアパレル企業で第2位に迫る規模です。

柳井正氏
「2001年のロンドン進出以来、数々の失敗を繰り返しつつも、その経験に一つ一つ学び、ようやくグローバルプレーヤーとしての基本を身につけつつあります。私たちは決して突出した才能を持つ人間の集団ではありません。しかし過去40年、当たり前のことを愚直にやってきたので成長できました」


【働くこと“仕事”とは】

“失われた30年”とも言われる日本の経済。そのなかで創業から40年、成長を続けています。“ユニクロ”を世界的なブランドにした柳井正氏が考える企業、そして日本の成長に必要なこととは…。

大越健介キャスター
「バブルが崩壊してから日本は『自分たちはダメな国なんじゃないか』という思いにずっと囚われてきて」

柳井正氏
「バブルが崩壊して、それ以来、成長していませんからね。でも周囲の国は全部成長してきたんですよ。そういうのを見たら、自分の会社とか自分の国が今のままでいいんだろうかと考えますよね。若い人がそういう気持ちになるのも分かるんですよ。この30年間、そういういい目をまったく見なかった。(彼らの)親父も見ていないからですよ。でも世界は広いんで、どんどん成長する国があって、環境問題とかデジタルとか色んな面で変わりましたよ。日本だけが変わってないんで(必要なのは)『自分が変わる』ということだと思います」

大越健介キャスター
「柳井さんご自身とユニクロというブランドがモデルケース」

柳井正氏
「繊維産業でもここまでできたんだから、他の産業ならもっとできるでしょ」

大越健介キャスター
「いわゆる働き方改革はどうでしょうか?」

柳井正氏
「あれはダメ。形式的すぎる。働くのは自由でしょ。一定の基準は設けないといけないんですけど、時間で管理するっていうこと自体が仕事の本質から外れてるんじゃないかなと思う。それぞれの人がそれぞれのペースで仕事できるのが一番いい環境なんじゃないですか」

1984年、広島で始まったユニクロの歴史。2001年以降、次々と海外進出を果たすと、2018年に海外売上が国内を上回り、日本を代表するグローバル企業に。創業から40年、10年ごとに売り上げを3倍にする飛躍を続けてきました。

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■成長につながる“ルーティン”
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■成長につながる“ルーティン”

柳井氏には“会社の成長のため”続けていることがあります。

柳井正氏
「朝5時に起きて6時過ぎに会社に来るんですよ。みんな嫌がりますけど。30分単位とか15分単位で会議というよりも打ち合わせをして、色んな指示とか意見交換をしながら仕事をしている。午後3時か4時くらいに帰るのが毎日のルーティン」

大越健介キャスター
「ビジネスの世界で生きている方はアフター5のお付き合いも」

柳井正氏
「いやー疲れるでしょう。付き合う必要はないんで」

大越健介キャスター
「家で寝るまでの時間をどう過ごす?」

柳井正氏
「本を読んだりPC見たりしてます。ビジネスで成功した成功者の自伝みたいのが多いです。僕はこういうふうに考えているんですよ。世の中に起きていることは、過去に誰かが必ず経験している。ビジネスの原理原則は変わらない。偉大な創業者みたいな人がどういう考えでそうやったのかを追体験して『僕だったらこういうふうにする』し『この人は何でこういうことをやったんだろう』と考える」

大越健介キャスター
「会社を任された時からグローバル企業に成長するまで、ずっと変わらず続けている習慣?」

柳井正氏
「もう一つは、絶対に成功するつもりだったら、きょうどんなことがあったのか、これからどういうことをするのか書きなさいと社員にも言っているし、僕もそういうふうにしている。書き出さないと整理できないでしょ?」

柳井氏がユニクロ創業時に書いた実際のメモには、店のコンセプトから客層のターゲット、そして商品量まで目指すべき目標が具体的に書かれています。

柳井正氏
「そうやって、できるだけ(仕事は)短時間で済ませ、短時間で帰る。日本はすごくそれに時間かける。人海戦術でしょ?1人あたりの生産性が低い。決して1人ずつの“能力”は低くない。むしろ高いくらいでしょ。もったいない。少数精鋭であるというのが成功の秘訣」

先月、世界の“ファッションの中心”パリで、ユニクロの40周年記念イベントが開催されました。パリ・コレクションに合わせて現地を訪れた柳井氏が各国メディアに伝えたのはユニクロ40年の道のりです。参加していた著名人のなかに、世界のファッション・トレンドに影響力を持つ、米国版『VOGUE』編集長 アナ・ウインター氏の姿も…。

米国版『VOGUE』編集長 アナ・ウインター氏
「今の日本の状況は?」

柳井正氏
「日本が元気にならないとエネルギーがない」

米国版『VOGUE』編集長 アナ・ウインター氏
「同感です。私たちで変えないと」

柳井正氏
「日本の繊維産業は戦前戦後、世界一だった。だからそういう技術、およびそれに関する見識、それともう一つ日本の大衆文化、これは世界一だと思う。そういうものを掛け合わせて日本発で世界に出ていくのが僕たち」

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■成長の“原動力”

■成長の“原動力”

いま日本に必要な“エネルギー”。柳井氏が考える、それを生み出す“原動力”とは。

大越健介キャスター
「大学生や高校生と話す機会があり『夢とか目標とか言われると、ちょっと自分苦手なんです』と」

柳井正氏
「“千里の道も一歩から”ってあるでしょ。千里行こうと思っても、その一歩を出すかどうか。今日出さないといつ出すんですかっていう。『明日間に合うな』って、あれ“やらない”ってことですからね。やるんだったら今日やる。今日やることが必要ですよね。ほとんどの人が計画を作るんですよ。計画作って終わり。実現しないよね。計画やって実行やって大体失敗する。失敗と正面から向き合うことで『この次どういうことやったら』『ひょっとしたらこういう方法で成功するのでは』という積み重ねで今日まできた。やらないことには話にならない」

大越健介キャスター
「失敗したことを忘れてさ、もういいやそれって」

柳井正氏
「忘れたらダメ。正面から向き合わないと。失敗というのは財産。自分が失敗したら次はどういうふうにするかというのをよく考えてやらないと、次の成功はない。僕の特徴は失敗が多いこと。失敗してもめげないということです」

大越健介キャスター
「働き方改革とずっと言われ続けていますが、労働時間の短縮と仕事の質を上げることはセットだと理解できました。柳井氏の場合はそれに加えて、自分でデザインする。社員一人ひとりが責任を自覚して働くことが必要だと話していました。組織のせいにしがちな“大企業病”に絶対陥っちゃいけないという強い意識のもとで経営にあたってきたからこそ、今の業績があるんだと感じました」

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