大阪・関西万博の開幕まで約半年となりました。会場の夢洲でパビリオンの建設が進む中、今回、取材班は環境問題に積極的に取り組むオランダに注目。万博では一体何を訴えようとしているのか、実際にオランダ現地に行って取材しました。オランダパビリオンの内容も一部明らかになりました。

オランダで実践されている『循環型経済』とは?

 ヨーロッパ北西部の国、オランダ。九州ほどの面積に約1700万人が暮らしています。国土の4分の1が海面より低いことから、水を排出するための風車が各地に建てられ、「キンデルダイクの風車群」は、世界遺産にも登録されています。

 首都アムステルダムの中心部には運河が流れ、まさに、水とともに生きてきたオランダ。その分、海面の上昇には敏感で古くから地球温暖化対策に取り組む環境先進国です。

 大阪・夢洲では、オランダパビリオンも順調に建設が進んでいます。パビリオンのテーマは「コモングラウンド」(共創の礎)。地球温暖化や食糧問題など、地球規模の課題に対しての解決策をみんなで話し合う場という意味で、パビリオンでオランダは、その解決策として「循環型経済」(サーキュラーエコノミー)を提案するといいます。

 オランダ国内で幅広く実践されているという循環型経済とはどういうものなのか、取材班は現地に向かいました。

地下水で室内温度を調節・木材の繊維で栽培

 アムステルダムから車で1時間半の街にある「コッパート・クレス」の野菜工場。料理に添えるシソやトウミョウなどを中心に、約90種類の野菜を栽培しています。
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 中には、こんな変わった野菜も。(コッパート・クレス スタイン・バーンCEO)「これはオイスターリーフ(牡蠣の葉)です」

 実際に食べてみると (記者)「おお!牡蠣の味がします」

 これらの野菜、栽培に化石燃料由来のエネルギーは一切使っていないといいます。

 カギは工場内に張り巡らされたパイプ。地下水を使って室内の温度を調節しています。

 (コッパート・クレス R&Dディレクター バート・ファン・メールスさん)「地下水を戻したり入れたりしています」

 仕組みはこうです。室内の温度が高い時には、冷たい地下水をくみ上げて循環させることで室内の温度を下げ、温まった水は再び地下に戻します。逆に温度が低くなったら、温かい地下水をくみ上げる、ということを繰り返しているのです。

 他にも、栽培には土の代わりに木材の繊維を使っています。育て終わったら紙の原料にする予定で、工場からの“廃棄物ゼロ”を目指しています。
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 (コッパート・クレス スタイン・バーンCEO)「『持続可能』とは地球や人々への害が少ないことを意味します。ですが、害が少ないだけでは十分ではありません。さらに一歩踏み出して『循環』が大事になるのです」

 オランダ特産のチーズをふんだんに使ったチーズトースト。ソースに使われるトマトなども、循環を意識した方法で栽培されていて、万博パビリオンのカフェでも提供される予定です。

建物が解体されたら…他の建物に活用できる仕組み

 「循環」の考え方は建築にも。

 (記者リポート)「建物の基礎に使われているあちらのレンガ、実は工場で余ったものが再利用されているといいます」

 2019年に完成したトリオドス銀行の建物は、レンガのほか、天井裏のはりや柱などに別の建物で使われていたものを再利用しています。

 建物に使われている全ての木材やガラスなどの材質や用途がインターネット上に登録されていて、建物が解体された場合には、すぐに他の建物に活用できる仕組みが整備されているのです。

 (RAU architects シニアアーキテクト マルタ・ロイさん)「この地球は閉鎖系だと考えなければなりません。何も入ってこないし何も出ていきません。循環型経済の主な目標は、限られた資源を無限に活用することなんです」

水を分解して水素を取り出す工場

 さらに、年間4億トン以上の貨物を扱うロッテルダム港では、風力や太陽光で作った電気で水を分解して水素を取り出す工場を建設中です。トラックや船の燃料などに活用するほか、貿易港の強みをいかして、他の国に水素を輸出することも計画しています。

 (ロッテルダム港湾局 ニコ・ファン・ドーレン新規事業開発部長)「水素はガス田などに貯めることができます。新しいエネルギーシステムにおいて水素は便利な方法・物質です。ロッテルダム港の役割は、地元で使うだけでなく世界に運ぶことです。例えば大量の水素をドイツに輸出し、鉄鋼業や化学産業に使うつもりです」

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