琉球朝日放送(QAB、那覇市、上原直樹社長)は、2025年1月からAIアナウンサーを使ったコンテンツの放送、配信を開始する。インバウンド(訪日客)と沖縄県内在住外国人を対象に、3カ国語で翻訳したニュース動画や災害時の情報などを配信する。NEC(東京)がシステム開発を担当。両社によると多言語対応のAIアナウンサー導入は全国の放送局で初めて。(政経部・村井規儀)

 AIアナウンサーには韓国のDeepBrainAI社のAIアバターを採用。放送原稿に合わせ、自然な形で口元を動かして読み上げる。80カ国以上の言語に対応可能だが、英語、中国語、韓国語の3カ国語から始める。NECはもともとQABの放送システムを担っており、それと連携した省力化につながるシステムを構築する。アナウンサーを含む制作スタッフの負担軽減にもつなげる。

 当日の地上波で放送したニュースを中心に、QABの公式動画サイトにアップする。災害時の避難呼び掛けなどは、日本語と外国語を交互に放送する予定だ。人手不足で実現できなかった地上波の夜間・早朝のニュース枠も新設し、放送時間が足りず、後日に回してきたニュースを先行配信するなど視聴者拡大も狙う。

 導入の背景には、業界全体のスポットCM(番組を指定しないCM)不況による収益減がある。収入増には新しいコンテンツが必要で、AIアナウンサーの動画配信では外国人を対象とした新規広告主の獲得、夜間・早朝のニュース枠では需要のあるタイムCM(番組を指定するCM)の出稿につなげたい考えがある。

 QABの池原あかね常務は4月にあった台湾東部沖地震に伴う県内での津波警報を例に「それぞれに適した言葉で、沖縄のニュースや災害情報をしっかりと伝えていく」と多言語ニュースの意義を強調。NECの仲村孝子主任は「沖縄から全国へ発展するシステムにしたい」と述べた。

 同事業は県の2024年度沖縄DX促進支援事業の採択を受け、総事業費の9割を県が補助している。

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