野村証券の看板=東京都千代田区で2024年9月25日午後6時17分、幾島健太郎撮影

 自社資金による日本国債の先物取引で相場操縦をしたとして、証券取引等監視委員会は25日、金融商品取引法に基づき、証券大手の「野村証券」に対して課徴金を納付させるよう金融庁に勧告した。課徴金額は2176万円としている。

 監視委によると、同社のトレーダーが2021年3月9日、大阪取引所で行われていた長期国債の先物取引で、「見せ玉(ぎょく)」と呼ばれる不正な手法により価格を変動させた。同社には148万円の利益が出たという。

 見せ玉は、売買を成立させるつもりがないのに注文を大量に出して取引確定前に取り消し、価格を変動させる手法。金商法は、取引が活発に行われているように投資家に誤解させて損害をもたらしたり、市場を混乱させたりする行為として禁じている。

 今回の相場操縦の組織的な関与の可能性について監視委は、現段階では「答えられない」としている。一方、勧告対象をトレーダー個人ではなく同社とした理由は「会社の取引として行われ、利益も会社に帰属しているため」と説明。同時期に同社の他のトレーダーが取り扱った先物取引額も課徴金に算入したという。監視委は「市場の公正性を確保しなければならない立場にもかかわらず、信用を失墜させる行為だ」と指摘した。

 野村証券は25日、監視委の勧告について「このような事態が起きたことを厳粛に受け止め、心よりおわびします。法令順守体制や内部管理体制の強化・充実を図り、再発の防止と信頼の回復に努めていきます」とのコメントを出した。

 監視委によると、国債先物取引を巡る機関投資家による違反行為は、18年の三菱UFJモルガン・スタンレー証券など過去に3件ある。【渡辺暢】

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