利下げを発表するジェローム・パウエルFRB議長(9月18日) ANDREW KELLYーREUTERS

<約4年半ぶりの利下げがアメリカの景気と11月の大統領選に及ぼす影響を専門家に聞く>

FRB(米連邦準備理事会)は9月18日、政策金利を0.5%引き下げて4.75〜5%とすると発表。政策金利の引き下げは約4年半ぶりだ。

今回の利下げは、そのタイミングが重要な意味を持つ。6週間後に迫る米大統領選は接戦が予想されており、有権者が経済の動向をどう捉えるかが結果を左右しかねない。

ニュースサイトのザ・カンバセーションは、予測される利下げの影響について、ノースカロライナ州立大学のマイク・ウォルデン名誉教授(経済学)に話を聞いた。

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──この利下げは米経済のどのような現状を示しているか。

FRBには2つの使命がある。1つはインフレ率を目標値の2%前後に抑えること。もう1つは失業率を低く維持すること。この2つのバランスを取りながら、政策金利の上げ下げを判断する。ここ数年はインフレ抑制に重点が置かれて利上げが続き、2022年初めに0〜0.25%だった政策金利は5.25〜5.5%にまで上昇していた。

今回の利下げ幅が一部で予想された0.25%ではなく0.5%だった理由は、労働市場にあるだろう。現在の失業率は4.2%と決して悪くないが、以前ほど堅調ではない。景気後退の到来に警鐘を鳴らす専門家もいるし、既に景気後退入りしているという見方さえある。

──今回の利下げはどのような影響をもたらすだろうか。

これで物価が2019年の水準に戻るわけではない。賃金の下落とデフレという条件がそろわなければ、そうはならない。今回は、物価上昇のペースを鈍化させるくらいだ。

だが、影響はある。利下げのニュースが流れた直後、株価は一時的とはいえ急騰した。

投資市場は予想される変化を先取りしがちなため、利下げ決定を前に一部の住宅ローン金利は下がり始めていた。FRBは一層の利下げを示唆しているから、住宅ローン金利はさらに下がるだろう。

──利下げと選挙の関係について歴史から分かることは?

多くの有識者は、FRBが独立機関で、純粋に経済のために最善の決定を下していることを理解していると思う。

過去半世紀でFRBの判断が疑問視されたのは、ニクソン政権期の1度きりだ。当時のアーサー・バーンズ議長の下、FRBは1972年の大統領選の前に経済が繁栄しているように見せるため金融緩和を行い、利下げに踏み切ったと批判された。だがその後、2桁のインフレとなり、政権に大きな痛手となった。

──それでも大統領選に影響が及ぶ可能性は?

米国民の景況感という点については、あまり影響はない。しかし、2人の大統領候補が今回の利下げを選挙に利用する可能性は十分にある。

民主党は自らの政権下でインフレを抑制した成果を強調し、利下げが住宅ローンを抱える国民にどれだけ役立つかを喜々として説明するだろう。自分たちが利下げ決定に何の役割も果たしていないという事実に触れることはない。

一方の共和党は「FRBは米経済が予想以上にひどい状態にあるから利下げを決定した」と主張するかもしれない。0.5%という利下げ幅は「FRBが必死だという表れであり、バイデン政権のせいで米経済が景気後退にあることを意味している」などと言いかねない。

Michael Walden, Professor and Extension Economist, North Carolina State University

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.


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