スタートアップ(新興企業)と言えば、転職先として「報酬面や働き方で劣るのでは」といった印象を持たれがちだ。しかし、リクルートがスタートアップへの転職者を分析したところ、安定志向が強そうな40歳以上は他の年代より伸び率が高かった。その要因として、先入観を拭い去る実態があるようだ。
転職サービス「リクルートエージェント」を利用して設立10年以内の株式未公開企業へ転職した人について、2015年度と23年度を比較した。全体では3.1倍に増加。年代で分類すると20~39歳が2.7倍だったのに対し、40歳以上では7.1倍と伸びが大きかった。
考えられるのは報酬面で起きた変化だ。
年収を「400万円未満」と提示した企業は、67.4%から41.5%に減少した。その一方で「400万円以上600万円未満」は25.0%から40.2%に、「600万円以上800万円未満」は5.3%から12.0%にそれぞれ拡大した。「1000万円以上」も1.0%から2.3%に増えた。
こうした変化について、スタートアップ領域専任コンサルタントの新堂尊康さんは、資金調達手法の多様化や、スタートアップ育成を掲げる政府などによる手厚い補助金を背景に挙げる。会社の成長を従業員に還元しようと自社株を提供するケースもあるという。
スタートアップを巡っては「経営陣や社員が若く、ハードな働き方なのではないか」と懸念する人も多い。新堂さんは「近年は従業員のワーク・ライフ・バランスに配慮する企業が増えている」と説明する。
それでも人手不足はスタートアップも同様で、8年間で求人数は6.8倍に増えたが、転職者数は3.1倍にとどまった。新堂さんは「求職者の不安を解消するため、自社に関する情報の透明化を図り、魅力を訴求することが重要だ」と指摘している。【嶋田夕子】
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