日本損害保険協会は19日、損保各社から保険代理店への出向を制限する業界向けの指針を定めたと発表した。顧客企業との関係強化など営業を目的とした出向を禁じる。顧客情報の漏えい問題などで明らかになった、損保大手と代理店がもたれ合う商慣習を抜本的に改める狙い。
自動車保険や火災保険などの損害保険は、90%以上が代理店を通して契約されている。これまで損保会社は代理店に社員を出向させ業務を担わせてきた。
そうした中、大手損保4社から代理店に出向している社員が、出向先で管理されていた同業他社の顧客情報を自社に送るなど、代理店の絡んだ不適切な問題が相次いで発覚。業界を挙げた対応を迫られていた。
指針は、代理店に限らず銀行など全ての出向先を対象とした。顧客企業との関係強化や自社の保険契約の拡大・維持につながるような目的の出向を「不可」と明記。出向社員の育成や業界共通の基盤整備といった要件を満たす出向のみ認める。出向の目的に関わらず、自社の保険商品の優先的な取り扱いを誘引するような行為も認めない。
協会はまた、政策保有株に関する新たな指針も公表した。政策株を新規に保有しないことや、株式配当などを目的とする「純投資」に安易に切り替えない方針などを盛り込んだ。一連の指針に法的な強制力はなく、協会が各社の取り組み状況を確認するなどして実効性を持たせるとしている。
城田宏明会長(東京海上日動火災保険社長)は19日の定例記者会見で、「社会の常識と乖離(かいり)した業界の慣行が、情報を取り扱う場面でも顕在化した」と述べ、謝罪した。東京海上日動では、代理店への出向を、目的に関係なく原則廃止とする方針も明らかにした。【井口彩】
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