(ブルームバーグ):17日の日本市場では株式相場が大幅続落。日本の連休中に一時1ドル=139円台と1年強ぶりの水準まで円高が進んだことで、輸出企業を中心に業績下振れを懸念した売りが強まっている。

円相場は16日のアジア市場で心理的節目の140円を上回り、一時139円58銭と2023年7月以来の高値を付けた。きょうから始まる米連邦公開市場委員会(FOMC)で見込まれる利下げが通常の倍の50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)になるとの観測が再燃したことが背景。一方、日本銀行は19、20日の金融政策決定会合で、経済・物価見通しが実現すれば利上げを進める姿勢を改めて示す可能性が高いとみられている。

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連休明けの円相場は反動売りから一時1ドル=141円台に反落した後、140円台でのもみ合いに転じている。債券相場は上昇。米国の金利低下が波及したほか、高市早苗経済安全保障担当相が週末に行われた自民党総裁選候補者の公開討論会で、日銀は金融緩和を継続すべきとの立場を鮮明にしたことが支えになっている。

野村アセットマネジメントの石黒英之チーフ・ストラテジストは、米ダウ工業株30種平均が最高値を更新する中での足元の日本株の異常な弱さは、日銀と市場とのコミュニケーションがうまくいっていないためだと指摘。円高下でもかたくなにタカ派姿勢を変えない背景が読みづらく、日銀リスクは金曜日まで残ると述べた。

株式

東京株式相場は日経平均株価の下落率が一時2%を超えるなど大幅安の展開。連休中の円高進行が嫌気され、電機や自動車など輸出関連株が売られている。米国の金利低下を受けて銀行株も安い。

TOPIXの下げをけん引しているのはトヨタ自動車で、3.3%の値下がり。指数構成銘柄2131のうち、1415銘柄が下落、630銘柄が上昇している。

アイザワ証券投資顧問部の三井郁男ファンドマネジャーは、米金利低下の利ざやに対するネガティブな影響が意識され、米国事業のエクスポージャーが高いメガバンクや保険など中心に売られやすいと指摘。日米の金融政策決定を前に金利差の視点から円高バイアスがかかりやすく、輸出企業の業績への影響が懸念される一方、しばらく織り込まれてきた話でイベント通過後は相場は回復するとの見方もあるだろうと話す。

為替

東京外国為替市場の円相場は1ドル=140円台半ばで推移。連休中に一時139円台まで進んだ円高は行き過ぎとの見方から売りが先行したが、141円台を維持することはできなかった。

野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは「休日明けでドルを押し目買いするフローがあった」とした上で、株安もあり「ドルの上値は引き続き重い」と話す。今週のFOMCでの利下げ幅が不透明なため、利下げ幅が小さく失望感からリスク回避の株安となることへの警戒感もあると言う。

債券

債券相場は上昇。FOMCが今週の会合で大幅利下げに踏み切る可能性が意識され、米長期金利が低下した流れを引き継いだ。新発30年国債利回りは8月初旬以来の2%割れで推移している。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大塚崇広シニア債券ストラテジストは、50bpの米利下げ観測がくすぶっており、「警戒感から日本の金利にも低下圧力になっている」と説明。ただ、買い一巡後は相場が伸び悩んでおり、「午後はFOMCや日銀の金融政策決定会合を控えて様子見ムードになりやすい」と述べた。

SMBC日興証券の奥村任シニア金利ストラテジストは、週末に自民党総裁選の有力候補の一人である高市氏が金融緩和継続を求めるスタンスを明確にしたことは「国債の売り手控えにつながる」と指摘。円高が輸入物価の低下圧力として意識されることも金利低下材料になりやすいと話した。

--取材協力:長谷川敏郎、岩井春翔.

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