記者会見に臨む欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁=2024年9月12日、ロイター

 欧州中央銀行(ECB)は12日の定例理事会で追加利下げを決め、金融政策を引き締めから緩和へ転じたことがより鮮明となった。ドイツを中心とした経済減速の懸念が強まっており、市場ではECBが経済の下支えのため、年内に少なくとも更に1回は追加利下げに踏み切るとの見方が広がっている。

 ラガルド総裁は会合後の記者会見で、小幅ながらも着実に追加利下げを刻む今回の決断について「完全に正当だ」と述べ、金融政策のかじ取りに自信を示した。利下げの決定が全会一致だったことも明かした。

 ECBは今回、市場が注目する指標である民間銀行が資金を預ける際の中銀預金金利について、0・25ポイント引き下げて3・5%にした。民間銀行が資金を借り入れる際の主要金利は0・6ポイント低い3・65%とした。

 ラガルド氏は物価の見通しに関して「我々の予想の堅実性に対する自信は確実に強まった」と語り、この数年最大の懸案だった物価上昇(インフレ)の抑制に手応えを示した。実際、欧州連合(EU)統計局によると、8月のユーロ圏20カ国の消費者物価指数上昇率は前年同月比2・2%となり、7月の2・6%から鈍化した。目標とする2%に近づいている。

 一方、4~6月期の実質域内総生産(GDP)は前期比0・2%の増加にとどまり、低調な状態が続く。欧州経済をけん引する存在であるはずのドイツに限れば0・1%の減少であり、2期ぶりにマイナス圏に沈んだ。

 そのため市場では次の追加利下げについて、有力視されている12月から10月に前倒しされる可能性もささやかれる。だが「次の一手」を問われたラガルド氏は「スペイン語で『ケ・セラ・セラ(なるようになるさ)』と言いたくなる」と冗談交じりにかわし、あくまでインフレ再燃と経済減速の両方のリスクに目配りしながら、慎重に政策運営する姿勢を崩さなかった。【ブリュッセル岡大介】

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