コメの品薄状態が深刻化する中、2024年産の新米がようやくスーパーなどに出回り始めた。米不足も徐々に解消される見通しだが、新米の店頭価格は昨年より大幅に高騰している。作柄はいいはずなのに、なぜなのか。
東京都足立区の「スーパーさんよう」。店頭に並んだ新米は5キロで3000円台と昨年の1・5倍ほどという状況だ。同区の「ベニースーパー佐野店」でも5キロ3000~3500円程度と、やはり昨年より3~4割ほど高くなっている。
原因は仕入れ値の上昇だ。スーパーさんようの担当者は「お客さんからも『高いですね』とよく言われる。しばらくすると落ち着いてくれるとは思うが……」と苦い顔。ベニースーパー佐野店の担当者も「コメ不足はようやく緩和されてきたが、新米価格の高止まりが今後も続けば、消費者が買ってくれるか心配だ」と不安げに話した。
農水省が8月30日に発表した24年産米の作柄概況によると、青森県が「良」、北海道や秋田県など11道府県が「やや良」、31都府県が「平年並み」となり、「やや不良」は3県だけだった。猛暑で流通量が減少した23年産米に比べ、収量、品質ともに上向きそうだ。
それでも新米価格が上昇しているのは、肥料や人件費など生産コストが上昇しているためだ。
JAは各地の生産者に新米の「概算金」を仮払いしている。24年産米の概算金は前年より「引き上げた」というJAが多い。JA全農にいがた(新潟市)は「資材価格など生産コストが増加している。営農継続のためにもコスト増加分を反映した」と説明する。
今後の新米価格はどうなるのか。坂本哲志農相は6日の閣議後記者会見で「一般的には円滑な流通が進めば価格も落ち着くものと考えている」と述べ、価格は徐々に落ち着いていくとの見方を示した。
そのうえで「農水省としてはスーパーなどにコメが安定的に届くよう出荷や在庫などの状況を把握し、関係団体への働きかけなど丁寧な情報発信を行う」と強調し、消費者に冷静な対応を呼びかけた。
JA全農にいがたは12日、新潟県産コシヒカリの県外向けの出荷式を開いた。週末には全国のスーパーに新潟県産米が届く予定だ。コメ不足や新米価格の高騰などに揺れた令和の「米騒動」は果たして収束に向かうのだろうか。【福富智】
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