公正取引委員会の看板。公正取引委員会などが入る中央合同庁舎第6号館B・C棟で=東京都千代田区霞が関で2019年、本橋和夫撮影

 フリーランス(個人事業主)の保護を目的とするフリーランス新法の11月施行に伴い、公正取引委員会などは、企業とのトラブルや人権侵害などの実態把握に向けた大規模調査を実施する方針を固めた。施行後の2024年度中に、フリーランスとして働く個人や業界団体に対し、万単位の書面アンケートを配布する。幅広く被害申告などを求めることで迅速な救済へとつなげたい考えだ。

 推計で500万人近いとされるフリーランス人口に対し、新法による取り締まりの中核を担う公取委の人員は施行時点で60人ほど。書面アンケートは、限られた人員で効率的に対応する狙いもある。公取委などは業界団体を通じた予備調査にも着手しており、特に問題の多い業界は施行後、重点的に取り締まるという。

 新法は保護対象について、建設業の「一人親方」やアニメーター、IT技術者をはじめ、ウーバーイーツ配達員のように単発で仕事を請け負う「ギグワーカー」などを想定している。こうした個人に仕事を委託する企業に対しては、報酬など取引条件の明示や、成果物の受け取りから60日以内の報酬支払いなどを規定。ハラスメント対策も求め、安心して仕事ができる環境を整備するとしている。

 報酬の減額や買いたたきといった不当な取引に関する案件は公取委と中小企業庁が、うその募集情報などについては厚生労働省がそれぞれ取り締まりを担う。違反の疑いがあれば立ち入り検査をし、再発防止を勧告・命令する。公取委は22人態勢の「フリーランス取引適性化室」を新設したほか、全国で30~40人の非常勤職員を新たに採用する予定だが、担当者は「人員が十分かどうかはやってみないと分からない。施行後も絶えず増強が必要だろう」と話す。中企庁は約30人態勢で臨み、厚労省は各都道府県の労働局で対応する。

 内閣府などの推計で462万人(2020年度)とされるフリーランスを巡っては、政府が「新しい働き方」として成長戦略に位置付けてきた。一方、企業との契約形態などから「労働者」とも「事業者」ともみなされず、労働基準法や下請け法といった既存の法律による救済が難しいケースも多いとされている。【渡辺暢】

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