電気自動車(EV)用の車載電池生産で国内トップのパナソニックホールディングス(HD)は9日、従来の5倍の容量を持つ新型電池の量産に向け、電池事業子会社「パナソニックエナジー」和歌山工場でイベントを開いた。当面はEV大手、テスラ向けに供給するとみられる。世界でEV需要の鈍化が叫ばれる中、パナソニックは「(電池需要は)中長期的に拡大する」として生産能力拡大を続ける方針だ。
イベントでパナソニックHDの楠見雄規社長は「この新型電池がEVの普及拡大に寄与すると確信している」と強調した。
和歌山工場で量産されるのは「4680」と呼ばれる円筒形のリチウムイオン電池。従来品より容量が大きく、1台当たりの電池搭載数を減らすなどEVの生産コストを削減できる。まずは小規模生産からはじめ、将来的には和歌山工場以外で「4680」を量産することも検討する。
足元ではEV需要の鈍化が影を落とす。トヨタ自動車やボルボ・カーがEVの生産目標を縮小するなど世界の自動車大手が戦略の見直しを迫られている状況だ。
車載電池はパナソニックHDの大黒柱。市況悪化のあおりを受け、6月には2031年3月期としていた電池事業の売上高3兆円超の目標達成時期を撤回するなど打撃は大きい。
それでも同社が生産能力拡大の姿勢を崩さない背景には、政府の動きがある。車載電池市場は現在、投資攻勢をかける中韓メーカーに世界シェアを奪われつつある。現状を打開するため、政府は車載電池の国内生産や研究開発の体制を強化する戦略を22年に策定。経済産業省は6日、パナソニックHDとSUBARU、マツダの工場新設など12件に計約3500億円を助成すると発表するなど支援を加速している。パナソニックエナジーの只信一生社長は「車載電池の種類が増えることは我々の販売機会につながる」と述べた。【妹尾直道】
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