(写真:Amir Hamja/The New York Times)

イーロン・マスク氏率いるテスラは、電気自動車(EV)市場で劣勢に立たされているという投資家の懸念をさらに強めている。

同社が発表した2024年1〜3月期(第1四半期)の最終利益は、前年同期比55%減の11億ドルとなった。売上高は同9%減の213億ドルだった。

「業績不振は避けられない」と見られていた

テスラは今月、第1四半期の売上高が前年同期比8.5%減少したと発表し、また全世界の従業員の10%以上、約1万4000人をレイオフする計画を発表したため、業績不振は避けられないと見られていた。

カリフォルニア州フリーモントにある工場で2000人以上、テキサス州オースティンにある工場で2700人近くの従業員を含む人員削減は、テスラが売り上げの落ち込みに見合ったコストを圧縮するのに苦労していることの表れだと解釈された。

2023年1〜3月期、テスラは25億ドルを稼ぎ出し、業界屈指の利益率を記録したと発表した。しかし、先週新たに実施した値下げを含め、テスラは販売する車1台あたりの利益額を下げることを余儀なくされている。この戦略は、しばらくの間同社の販売を強化するのに役立っていたようだが、テスラは現在、価格を下げても買い手を引き付けるのに苦労しているようだ。

前四半期(2023年10〜12月期)のテスラの営業利益率は5.5%と、前年同期の半分であり、他の自動車メーカーの営業利益率と同水準になっている。

テスラの投資家たちは、売り上げと利益の減少がより大きな問題の兆候であることを懸念するようになっている。おそらく、既存の自動車メーカーや中国の新しい自動車メーカーとの競争激化に効果的に対応できないことを指摘しているのだろう。

マスク氏は最近、テスラは自律走行技術と「ロボタクシー」と呼ばれる車両に注力すると示唆しており、EVをより幅広い顧客層や多くの国の人々が購入できるようにする低価格の新モデルを開発するという同社の計画に疑問を投げかけている。

自動運転車はマスク氏にとって長年の夢だった。2019年に同氏は、翌年にはテスラが100万台の自律走行タクシーを走らせると言った。

既存車の部品を使って新車を作る

「テスラは、車のかっこよさ、自律走行車を発売するというアイデア、そして不可能に近いことをやってのけるマスク氏の能力に対する投資家の信頼感で生きてきた」と、ミシガン大学ロス・スクール・オブ・ビジネスのエリック・ゴードン助教授は指摘する。「そしてマスク氏への信頼は、失望と謎めいた行動によって打ちのめされている」。

テスラは23日、来年には低価格車の生産を開始する予定だと述べた。しかし、先行投資を減らすための変更として、新たな車は新しい部品と既存車の部品が一部使われる。この戦略により、テスラは新たな工場を建設することなく新モデルを製造することが可能になるという。

「このアップデートにより、コスト削減効果は以前の予想よりも低くなる可能性がある」と同社は投資家向けのプレゼンテーションで述べた。

今年に入り約40%下落していたテスラの株価は、第1四半期発表後、火曜日の後場に急上昇した。投資家たちは、同社がより手頃な価格のモデルの投入計画を維持していることを歓迎したようだ。

マスク氏はテスラの値下げを擁護し、すべての自動車メーカーが価格を調整しているが、通常はディーラー優遇措置など、購入者にはあまり見えない手段を使っていると述べた。テスラはフランチャイズ・ディーラーを通さず、オンラインで直接顧客に車を販売している。

「テスラの価格は、生産台数と需要を一致させるために頻繁に変更されなければならない」とマスク氏は述べた。

テスラは販売台数の減少について、世界的なサプライチェーンを混乱させた紅海での紛争、ベルリン近郊の工場で発生した火災による生産停止、フリーモントでモデル3セダンのアップグレード版を増産したことなどが原因だとしている。

テスラはまた、他の自動車メーカーがガソリンエンジンとバッテリーや電気モーターを搭載したハイブリッド車の販売を増やしたことが、完全電気自動車の販売を圧迫していると非難した。

インドへの訪問を「延期」

2024年4〜6月期は「もっとよくなる」と、マスク氏は決算発表後の電話会議で語った。

マスク氏は22日に予定されていたインド訪問を延期した。インドではナレンドラ・モディ首相と会談し、工場建設計画を発表する予定だったが、「テスラの義務が非常に重い」ことを理由に見送った。

今回の延期は、インドが新たな成長源になると期待していた投資家たちを失望させるかもしれないが、マスク氏がテスラの問題に緊急に取り組んでいるという安心感を与える可能性もある。自動車購入者の多くが小型で手頃な価格の車を好むインドでは、同社の車種が大量に売れる可能性は低い。

テスラの最新車両は、昨年生産を開始したピックアップのサイバートラックだ。しかし、先週のリコールで明らかになった情報によると、同社の販売台数はわずか4000台程度にとどまっており、大きな成長源にはならないことが示唆されている。

自動運転タクシーは望み薄?

自動運転タクシーは望み薄と見られているが、その理由の1つは、現在利用可能な最先端の自律走行システムでさえ、時に目に余るミスを犯すことがあるからだ。

さらに、テスラがこのようなタクシーを走らせるには、連邦政府、および州の規制当局のサインが必要だ。テスラは、ロボタクシーのソフトウェアを開発することが期待されるカリフォルニア州で、運転者のいない車をテストするライセンスをまだ持っていない。

「イーロン・マスクは2016年からロボタクシーをやると言っていた」と、自律走行システムに使われるソフトウェアを提供するApex.AIのヤン・ベッカーCEOは言う。が、「少なくとも短期的には、テスラがロボタクシーを提供するという十分な証拠は見当たらない」。

マスク氏は23日、AIの進歩により技術は急速に向上していると語った。アナリストからの質問に答えた同氏は、テスラを主に自動車会社として見ている人たちに焦りを示した。

「われわれはAIとロボティクスの会社だと考えられるべきだった」とマスク氏は言った。自律走行を完成させるテスラの能力を信じない人は、「この会社の投資家になるべきではない」と同氏は付け加えた。

最近まで、テスラは電気自動車で利益を上げている数少ない自動車メーカーの1つだったが、既存の自動車メーカーが追い上げてきている。ゼネラル・モーターズ(GM)も23日に決算を発表したが、同社のCFOであるポール・ジェイコブソン氏は、記者団との電話会議で、バッテリーパックの製造における問題を解決し、生産量を増やしていると述べた。

GMは依然としてガソリン車事業に依存しており、そのことが今年1~3月期の利益が24%増の30億ドルに跳ね上がった主な要因となっている。しかし同社は、今年後半にはEVの販売で利益を上げることを期待している、とジェイコブソン氏は語った。

決算で注目されていた「ポイント」

23日のテスラの決算発表への注目は、同社の方向性とマスク氏のリーダーシップに疑問を投げかける最近の一連の出来事の後ということもあり、異例なほど高まっていた。

先週、テスラの取締役会は、マスク氏を自動車事業に集中させ、彼の偏向的な発言や右翼的陰謀論との親和性が多くの潜在顧客を遠ざけているXに時間を割かせないよう、もっと努力することを期待していた投資家を失望させた。

取締役会は、デラウェア州の裁判所が無効としたマスク氏の470億ドルの給与パッケージを復活させる措置をとったからだ。取締役会はまた、テスラの本社所在地をテキサスに移すことを承認するよう株主に求めるとした。

この変更は、デラウェア州の裁判所が、2018年に承認された際の給与が過大であり、株主に適切な情報が提供されていなかったという理由で、1月に彼の給与パッケージを無効とした日にマスク氏が要求したものである。

(執筆:Jack Ewing記者)

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