定置網漁が解禁され、大樹漁港に初水揚げされた秋サケ=北海道大樹町で2022年9月、鈴木斉撮影

 サケの来遊数が低迷していることを受け、北海道は人工ふ化事業の実施時期や稚魚放流方法を見直す。低迷の背景にあるのは海水温上昇などの環境変化だ。水温の下がる10月以降に産卵するサケの割合を増やす。【石川勝義】

 サケを巡っては近年、北海道で秋に沿岸域の水温が適水温までなかなか下がらず、遡上(そじょう)に支障が出ている。黒潮由来の暖水の影響で太平洋側が特に顕著だ。

 2023年に北海道に来遊したサケ2256万匹の接岸時期をみると、前期(9月末まで)912万匹▽中期(10月末まで)1209万匹▽後期(11月以降)135万匹――と、前期と中期に集中した。漁業管理課によると、サケは受精と同時期に川を遡上して繁殖するという。10月以降の人工ふ化の割合を高めれば、適水温期に接岸するサケが増えるとみられるため、事業の見直しにつながった。

 そもそも、接岸時期が前期と中期に集中するのは人為的な影響だと考えられている。

北海道のサケ来遊数の推移

 人工ふ化事業は、サケ漁の期間を長くする目的で意図的に前期に集中させた経緯がある。サケは人工ふ化の普及とともに数を増やした。1970年代前半の来遊数は1000万匹未満だったが、94年に5000万匹を超えた。近年の海水温上昇で過去の取り組みが裏目に出た格好だ。

 海水温変化で春に川を下る稚魚も影響を受けている。道内はサバの漁獲量が増えている。こうした肉食魚に、サケの稚魚が食べられているという指摘がある。

 稚魚放流の適水温は5~13度とされるが、水温が低いと回帰率が悪いという研究結果がある。道は今後、関係機関と連携し海域調査を強化するほか、1カ月先の海水温を予測できる海況予測システムを活用しながら、放流のタイミングを見極めていきたい考えだ。ふ化放流マニュアルも今年度中に最新版に改定されることになっている。

 道は一連の対策を9月にとりまとめ、着手できるものから順次、取り組むという。漁業管理課は「環境が変化してもサケの資源量が減らないように対応したい」としている。

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