ILLUSTRATION BY MOOR STUDIO/ISTOCK

<人口最多世代のミレニアル世代(1981~96年生まれ)のマイホーム購入により、アメリカでは空前の住宅需要と大幅な供給不足が起きている>

家を買うタイミングに恵まれない......。アメリカのミレニアル世代(1981~96年生まれ)の多くにとって、それが悲しい「運命」だ。

2007~08年の世界金融危機で米経済と住宅市場が大不況に陥った当時、この世代は上の年齢層でもまだ30歳未満。下の年齢層がマイホーム購入適齢期になった頃には、住宅市場の好況で価格が高騰し、手が届かなくなっていた。


だが不利な経済的条件にもかかわらず、待つのにうんざりした彼らは、とにかく家を買うことにした。その遅れてやってきた大量参入が、住宅市場全体を揺るがしている。

「今や、前例のない規模の住宅需要が起きている。これは一時的流行でもバブルでもなく、人口統計学的な現実だ」と、インディアナ大学ビジネス研究センターのフィル・パウエル所長は言う。

もっとも、価格上昇の原因はミレニアル世代だけではない。ベビーブーム世代(46~64年生まれ)も価格圧力を加えていると、投資調査会社ネッド・デービス・リサーチのチーフエコノミスト、アレハンドラ・グリンダルは語る。

「(ミレニアル世代に次いで)人口が2番目に多く、購買力が高いこともあって、住宅需要を膨らませている」

「(ベビーブーム世代は)高齢者施設への入居を望まず、先行世代よりはるかに長く自宅で暮らし続けるつもりだ。セカンドハウス志向も強い」

全米不動産協会によれば、21年当時、初めて家を買う人の平均年齢は33歳だったが、ミレニアル世代がより手頃に住宅を購入できるタイミングを待っていた影響で、22年には36歳に上昇した。

20年後に待つ暗い未来

「先の不況以前は建設過剰で、不況後は新たに家を建てる意欲は低いと、資本市場や金融機関は見なした。将来的な世帯形成を度外視したため、住宅供給が大幅に不足している」と、インディアナ大学不動産研究センターのセーラ・コアーズ副所長は指摘する。

コアーズによれば、ミレニアル世代は「破壊的世代」だ。人口割合が大きく、世帯形成率は桁外れなのに、住宅供給は記録的な不足状態。「そうした事情が極端な購買行動を生み出している」という。

彼らの需要に応えるため、今後は住宅が数多く建設されるはずだと、コアーズは考えている。「その後の世代は規模がより小さいため、うまくいけば住宅市場が調整されるだろう。値頃感の不足が大問題になっているからだ」

グリンダルによると、住宅市場の未来を取り巻く最大の疑問は供給だ。「原因は既存の供給と、家を手放す人の数。(自宅暮らしを望む)ベビーブーム世代が近いうちに新規供給をもたらすことはない」

その上、住宅ローン金利が以前に比べて上昇している現在、より低金利のローンを確保している住宅所有者は住み替えをしそうにない。


パウエルがみるところ、ミレニアル世代の需要が主な要因である住宅価格の上昇傾向は今後5~10年間続きそうだ。

より長期的には、ミレニアル世代は別の不運に見舞われる可能性があるという。20年後、彼らが自宅売却を考える頃には、人口減少に伴う住宅需要の低下に直面しかねない。そのせいで、せっかくの持ち家も価値を失うことになる。

「ベビーブーム世代が寿命を迎え、彼らの家がようやく売りに出されたとき、住宅バブルははじけるだろう」

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。