楽譜作成ソフト「Finale」の開発元MakeMusic社のウェブサイトで、ソフトの開発中止が発表された=スクリーンショットより

 国内外の音楽家や音楽出版関係者の間で広く普及している楽譜作成ソフトウエア「Finale(フィナーレ)」の開発を終了すると、開発元の米国メーカー「MakeMusic」が26日、発表した。長らく楽譜出版業界の標準とされてきたソフトが35年の歴史に突然“終止線を引く”ことになり、関係者らは動揺を隠せない様子だ。

 MakeMusic社は、現在ソフトがインストールされているデバイスではOSを変更しなければ引き続き動作するとしながら、今後アップデートはされず、2025年8月以降は新たに使用するための認証やサポートを受けられなくなるとしている。コンピューターの基本ソフトのOSの進化により「付加価値の提供が難しくなっている」ことが開発終了の理由だという。

楽譜作成ソフト「Finale」を使用中のパソコン画面=スクリーンショットより

 さらに、同社はFinaleユーザーに対し、ヤマハ傘下のドイツの企業「スタインバーグ」が16年に発表した楽譜作成ソフト「Dorico(ドリコ)」の使用を勧めている。

 Finaleは1989年に販売が開始され、英語版以外に日本語版やドイツ語版、フランス語版などが発売されてきた。何十段もの五線を要するオーケストラ曲のスコアから、ギターのタブ譜や教育用楽譜といったさまざまな種類の楽譜が作成可能で、入力した楽譜は再生することもできる。

 26日夜(日本時間)に開発終了が発表されると、SNS上では作曲家や演奏家たちから驚きや戸惑いの投稿が相次いだ。「例えると(文書作成ソフトの)Word開発終了くらいのインパクト」といった意見や、今後の楽譜出版を懸念する声も多い。芥川作曲賞や映画「竜とそばかすの姫」で日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞した作曲家の坂東祐大さんはX(ツイッター)で、自身は別ソフトのユーザーだとしつつ「作品の改訂やパート譜の新たな作成、修正、そして古い稿もたどれなくなると思うと損失が大きすぎる」と投稿した。【西本龍太朗】

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