(ブルームバーグ):中国共産党の習近平総書記(国家主席)は22日、鄧小平氏の生誕120年を記念する演説で、学生らの民主化運動を武力で鎮圧した1989年の天安門事件に言及し、党の統治を守ったとして鄧氏を称賛した。中国の景気が停滞する中、社会の安定を巡る当局の懸念が浮き彫りとなった。

習氏は演説で、「鄧小平同志は党と人民を率いて旗幟(きし)鮮明に動乱に反対し、社会主義国家の政権を断固守り、党と国家が危険な風や荒波の厳しい試練に耐えられるようにした」と評価した。

天安門事件への今回の言及は、政府の公式見解に沿ったものだったが、中国指導部が事件について公に触れるのは異例だ。天安門事件の武力弾圧に関するニュースやソーシャルメディアへの投稿は通常、中国全土で検閲対象になる。

毛沢東氏以来最も強力な指導者である習総書記は、鄧氏が思想政治活動と優れた伝統教育を強化する必要性を強調し、「紅色江山(共産党による統治)」の安定確保に貢献したとも指摘。「中国は必ず自ら選択した社会主義の道をあくまで歩む。誰もわれわれをつぶすことはできない」という鄧氏の発言を引用した。

国内に不満

中国当局が不動産セクター危機で拍車が掛かる景気停滞への対応を続け、消費者や企業がますます悲観的になっている中で、今回の演説が行われた。7月には、新卒者の労働市場への流入に伴い、若者の失業率は5カ月ぶりに上昇した。

数十年にわたる急速な経済成長によって、何億人もの人々が貧困から抜け出すことができたが、ここにきて多くの中国人の間で不満が高まっており、現代を「歴史的ごみ時間」と呼ぶことも多くなっている。ごみ時間とはもともと、スポーツの試合で劣勢のチームに逆転の見込みもなく、勝敗が決まった後の残り時間を指す。

習総書記は演説で、鄧氏に言及して現在の政策に大きな正当性も持たせた。鄧氏をたたえる中で、経済の現代化と共同富裕を推進し、軍備を増強し、台湾統一を目指す取り組みを強調した。

原題:Xi Touts Deng’s Security Legacy in Rare Nod to 1989 Crackdown(抜粋)

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