衆院財務金融委員会の閉会中審査で公明党の中川宏昌氏の質問に答弁する日銀の植田和男総裁(左)。右手前は鈴木俊一財務相=国会内で2024年8月23日午前9時52分、平田明浩撮影

 日銀の植田和男総裁は23日、衆参両院の閉会中審査に出席した。足元の金融市場について「引き続き不安定な状況にある」との認識を示し、「当面はその動向を極めて高い緊張感を持って注視する必要がある」と述べた。8月上旬の株価の大暴落と急騰後、植田氏が公の場で発言するのは初めて。市場の安定に目配りする姿勢を見せつつ、経済や物価が日銀の見立てに沿って推移すれば利上げを続ける従来の方針は堅持した。

 日銀は7月末の金融政策決定会合で、政策金利を0~0・1%程度から0・25%程度に追加利上げすることを決定。植田氏はその際の記者会見で今後も段階的に利上げする意向を強くにじませ、為替相場は円高・ドル安が進んだ。8月に入ると米国の景気後退懸念が強まり、日経平均株価は5日に過去最大の下げ幅(前週末終値比4451円安)を記録。翌6日には急反発し、最大の上げ幅(前日比3217円高)となった。

 植田氏は23日の国会答弁で「金融市場が大きく動いた時には経済・物価見通しにどういう影響があるかという観点から、適切に考えていきたい」と語った。

 今後の利上げについては「経済・物価の見通しが日銀が持っている姿通りに実現していく確度(確信の度合い)が高まると確認できれば、金融緩和の度合いを調整する基本姿勢に変わりはない」などと繰り返し説明。段階的な利上げを継続する考えを改めて示した。

 23日の東京外国為替市場では、閉会中審査の間に1ドル=146円台前半から145円台半ばまで円高が進んだ。市場からは「植田氏のスタンスは7月時点から変わっておらず、比較的(利上げに積極的な)タカ派の内容だった」(三菱UFJ銀行の井野鉄兵チーフアナリスト)との声が聞かれた。【浅川大樹】

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