長浜バイオ大発のスタートアップ企業「ノベルジェン」(滋賀県長浜市田村町、小倉淳社長)は、人工的に大量発生させた微細藻類を使ってカキを短期間で大きく育て、輸出拡大につなげる事業に取り組んでいる。農林水産省の助成金を得て、研究・実証が進む。小倉社長は「出荷直前のカキを肥育し、付加価値の高いカキを生産する」と意気込む。
同省の事業採択を受けたテーマは「日本産冷凍生食用カキの品質向上と輸出量増加を目的とした、カキの短期肥育システムと流通DXプラットフォームの開発と実証」。2023年12月に採択され、実証事業の期間は28年3月まで。12億4700万円の助成金を獲得した。
同社は同大アニマルバイオサイエンス学科の教授でもある小倉社長が19年に設立。小倉社長は約20年にわたる研究で、赤潮が発生するメカニズムを人工的に再現して、微細藻類を急速に大量発生させる「Algal Bloom Capture(ABC)技術」を開発した。微細藻類は、光合成で二酸化炭素を吸収したり、水中の窒素、リン、カリウム、ミネラルを取り込んで水を浄化したりする特性がある。同時に、カキにとっては栄養豊富なエサとなる。
元々、同社は広島県から「カキの育ちが悪いから解決してほしい」と相談を受けて肥育の実証試験を続けていた経緯がある。今回は国内で流通するカキより身の大きなものが好まれる海外のニーズに応えられるカキの肥育プロジェクトへと発展させた。
プロジェクトでは、ABC技術で増やした微細藻類を出荷直前の広島県産カキに与え、ごく短期間で海外で好まれるサイズまで大きくする。微細藻類の種類や組み合わせによってカキの肥育状況が変わるため、実験でさまざまな組み合わせを試している。現在、同社にある小さな研究用水槽で実験を進めているが、今年度中に同市内でカキの肥育実証施設の設置を目指す。将来的には琵琶湖の水を利用した肥育も視野に入れる。
また、カキの電子商取引サイトなどDXプラットフォームの開発も進めており、需要と供給のタイミングを合わせて輸出増を目指す。
小倉社長は「5年間で世界中に展開させる技術に拡大し、新しい産業創出につなげたい。滋賀に一大肥育拠点を作れば、滋賀でカキの生産も可能になる」と話した。【長谷川隆広】
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