今月に入っても記録的な猛暑に大雨が相次いでいますが、こうした気候変動の影響は農作物にも。対策が迫られる中、ビール造りの現場でも「気候変動に負けない」動きが広がっています。

暑い日に飲みたくなるのはやっぱり、ビール。都内のビアガーデンでは…

「やっぱり、昼間からビールはおいしい。汗かくから、もうなくなっちゃった」
「暑い時の方が飲めますね」

先月、観測史上最も平均気温が高かった日本。この記録的な猛暑がビールの売り上げに追い風となっている一方で、実は、生産現場では向かい風になっています。

というのも、極端な猛暑や大雨などで、農産物の品質や収穫に大きな影響が出ているからです。いま、ビール各社が取り組んでいるのは「気候変動に負けないビール造り」。

群馬県太田市。

サッポロビール 原料開発研究所 保木健宏 所長
「ここは原料開発研究所のラボ。麦芽の分析を行っている場所」

ビールの原料となる「大麦」を独自で育てています。

通常、大麦は外で栽培されます。しかし、いま、収穫前に降る大雨の影響で発芽してしまう「穂発芽」という現象が増え、甚大な被害が出ています。

サッポロビール 原料開発研究所 保木健宏 所長
「穂発芽の何が悪いかというと、穂発芽することによって、ビール原料として麦芽の加工には使えなくなる」

2100年までに地球で4℃気温が上昇すると、大麦を育てる原料が値上がりし、年間調達額は2050年におよそ5億円増加すると予想。

10年以上前から「気候変動に負けない」新品種を研究してきましたが、今年、「次世代大麦」を開発することに世界で初めて成功。

造ったビールを試しに飲んでみると…

記者
「麦の風味もしっかりあって、商品化されているビールとほとんど変わらない」

2035年までに商品への実用化を目指します。

一方、気候変動への取り組みは屋外だけではなく…

キリンHD 飲料未来研究所 今堀莉子さん
「通常だと縦向きに栽培するものを横向きに伸ばして栽培をしています」

ビール造りに欠かせないホップ。ビール特有の香りや苦味を作り出すもので、屋外での栽培が主流ですが、東大発のベンチャーとともに、屋内で栽培する技術を確立しました。

キリンHD 飲料未来研究所 今堀莉子さん
「野外であれば、1年に1回しか収穫ができない。屋内栽培施設であれば、年3~4回、収穫することができて、気候変動に対する研究開発をスピードアップさせることができる」

屋内栽培では、環境を人工で制御でき、温度や湿度などを自在にコントロール。天候にも左右されません。

キリンHD 飲料未来研究所 今堀莉子さん
「ホップに限らず、気候変動で気温が上昇したり、雨が降らなくなってきて、ホップの収量や品質低下というものが課題。品種改良や栽培技術の開発がものすごく求められている」

暑い日に美味しいビールをこれまでと同じく飲み続けられるよう、ビール各社の気候変動への対応は続いていきます。

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