キリンホールディングス(HD)などの共同研究チームは、ビール主原料のホップを室内で栽培する技術を確立したと発表した。屋外栽培では年1回しか収穫できなかったが、温度管理された室内なら複数回の収穫が可能になるという。涼しい気候を好むホップは地球温暖化の影響で、生産量や品質の低下が懸念されている。室内栽培で品種改良を重ね、暑さや乾燥に強い新たなホップや栽培技術の開発を進める。
ホップはビール特有の苦みや香りなど醸造に欠かせない。国内では約9割が東北地方で生産されている。後継者不足などで生産量は減り続けており、近年は温暖化や干ばつの影響で生育不良が深刻化。国産ホップは希少となっている。
気候変動に適応した新品種や栽培技術の開発を進めようと、キリンHDの飲料未来研究所と、東京大発の農業系スタートアップ「CULTA(カルタ)」(東京都小金井市)が2023年から共同研究を始めた。
静岡県の先端農業研究施設「アオイパーク」で、光や温度、湿度、二酸化炭素濃度などを制御できる実験装置を用いて室内栽培の試験を実施。カルタがホップの栽培管理と生育データを取得し、キリンがホップの栽培方法に関する助言や品質評価をしてきた。屋外の一般的なホップの収穫期は夏季だけだが、屋内で季節に関係なく収穫する技術をこのほど確立した。
これまでは収穫が年1回に限られたため、研究の機会が限られ、品種改良には10年以上を費やすといわれてきた。安定的に複数回の収穫が可能となったことで、「研究開発の加速が期待できる」(キリンHD)としている。【嶋田夕子】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。