ヘアカット専門店「QBハウス」。店頭にはカット料金「1350円」と掲げられている=東京都渋谷区の青山オーバル店で2024年7月、浅川大樹撮影

 全国どの店舗でも、常連客のように「いつものカットで」と注文できる――。国内最大手のヘアカット専門店「QBハウス」がこんな構想の実現を目指している。店舗を展開するキュービーネットホールディングスの北野泰男社長が毎日新聞の取材で明らかにした。利用客の注文履歴を確認する仕組みを導入して利便性を高め、来客数の増加と売り上げアップにつなげたい考えだ。

 QBハウスはシャンプーやブローなどを省いた効率重視の店舗運営が特徴。10分程度の短いカット時間や割安なカット代が支持され、事業を拡大してきた。現在の店舗数は全国で約560店に上る。

 各店舗では、特定のスタイリストに過度な負担がかかるのを避ける目的で指名制を導入していない。常連客であっても担当スタイリストは特に決まっていないため、普段のカット内容を伝えるのが手間になっているケースがあった。

 北野氏は「どの店舗でも利用客のオーダー履歴が共有されれば、究極のケースでは利用客が『いつもの』と注文すると、スタイリストは普段通りの髪形にカットできる。そうすれば利用客も安心感が高まる」と述べた。店舗間で客の注文データをカルテのような形で共有できるシステムを導入するなど、デジタル投資を進める方針だ。

 こうした利便性の向上で、ビジネス需要の更なる取り込みを狙う。QBハウスは駅構内など都市部の好立地に店を構えているのを強みとしており、今後は空港への出店も進めたい意向だ。「ビジネスマンは出張先の空港で(フライトまでの)待ち時間を持て余すケースがある」(北野氏)ため、ちょっとした空き時間を活用した来店も見込む。

 近所の店舗で休みの日に髪を切るだけでなく、より気軽に常連客感覚でカットしてもらう。そんな日が近いのかもしれない。【浅川大樹】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。