(ブルームバーグ):ESG(環境・社会・企業統治)に関する懸念で銀行が敬遠する石炭プロジェクトへの重要な資金提供元として、魅力的な投資リターンを求めるオーストラリアの富裕層が存在感を示し始めた。

豪インカム・アセット・マネジメント・グループ(IAM)は、豪州の富裕層をターゲットにした運用会社の1社で、石炭などの採掘会社にプライベートローンを提供し、年率約12%から13%の投資リターンを上げている。

IAMのデット・キャピタル・マーケッツ担当ディレクター、バルナ・グナティラカ氏は、「投資家は良好なリターンを求めており、クレジットでリターンを得られるなら、われわれは鉱業といった非ESGの案件にも投資できる」と、メルボルンでのインタビューで述べた。

IAMは過去3年間、石炭やコモディティー関連のインフラプロジェクトに5億豪ドル(約500億円)を超える融資を実行した。ホワイトヘイブン・コールへの最近の11億米ドル(約1600億円)規模のプライベートクレジットローンや、ニューサウスウェールズ州のNCIGの石炭ターミナルに対する1億7000万豪ドルのジュニアデットも、その中に含まれる。

IAMにとって、プライベートクレジットへの世界的な需要の伸びは、大きなリターンをもたらす石炭などへの資源投資に対して豪州の一部個人投資家の間で関心が高まっている状況と符合する。

豪州では再生可能エネルギー事業への投資の減速を受け、石炭開発への反対論が和らいでいる。開発業者は、コスト上昇や承認プロセスの長期化、送電網の容量制限と格闘しなければならない。

オリジン・エナジーは、電力不足への懸念から豪州最大の石炭火力発電所の閉鎖を2年延期することを最近決定した。予想よりも遅いトランジション(移行)がもたらすジレンマを浮き彫りにしている。

その結果、ESG推進派が反対し従来型の金融機関が撤退しているにもかかわらず、豪州では石炭関連のプロジェクトへの融資のパイプラインは健在だ。オーストラリア・コモンウェルス銀行やウェストパック銀行など豪大手行の一部は、一般炭(発電用石炭)採掘会社への融資を制限するか、控えるとしている。

IAMは、鉱業・鉱業サービスをはじめ、商業金融機関や機関投資家が敬遠してきた事業から高リターンを得る機会が増えているとの認識を示した。IAMのウェブサイトによると、同社の管理資産残高は30億豪ドルを超える。

締め出されたセクター

1兆7000億米ドル規模のプライベートクレジット市場は比較的新しく、大部分は信用収縮を経験したことがない。個人投資家が複雑なプロジェクトに融資するリスクを十分理解しているかは、今のところ不明だ。

「ファミリーオフィスや富裕層顧客は、非常に洗練された投資家だ」とグナティラカ氏は指摘。「独自のファイナンシャルアドバイザーや投資マネジャー、法律専門家、自社のアナリストを抱えている」と話す。

一方、環境団体マーケット・フォースの調査責任者、アクセル・ダルマン氏は、パブリックな債券市場から締め出されたセクターに投資しないよう個人投資家に警告している。

「投資家は兆しを見て、石炭が消えゆく市場だということを認識する必要がある」と同氏は指摘。「大手行はESGリスクが財務リスクであることを理解しており、プライベートクレジット市場の参加者は、身をもってそれを学ぶ可能性がある」と述べている。

原題:High Returns Lure Wealthy Investors to Fund Coal as Banks Exit(抜粋)

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