栃木県那須町は、東京都内と同町で2拠点生活をする会社員、平山寧(やすし)さん(50)に、総務省の地域活性化起業人制度の個人副業方式に基づき、2地域居住推進業務を委嘱した。同方式は4月から始まり、同町が総務省に問い合わせたところ、全国から委嘱に関する問い合わせはないといい、同方式の委嘱は初めてとみられる。
25日の交付式で委嘱状を手渡した平山幸宏町長は「町の推進する2地域居住の実践者としてアンバサダー的な役割を期待します」と歓迎。平山寧さんは「身に余る光栄。大企業に勤めて50代になり、複数の自治体でスマートシティ開発プロジェクトに関わった経験を生かして貢献したい」と意気込みを語った。
平山さんは東京都出身で、東京海上日動火災保険の部長職。新型コロナウイルスの影響で在宅勤務が中心だった2021年、環境に恵まれた場所での生活を考え那須町に別荘を購入した。以来、週末を中心にリモートワークを組み合わせて滞在し、1カ月に2往復ほど行き来しているという。
「金曜早朝の業務開始前に都内から移動し、那須でオンライン会議に参加。土日を那須で過ごし、月曜のリモート勤務を終えた後、月曜夜に都内に戻ることが多い」(平山さん)。物件探しの段階から町ふるさと定住課と交流があり、ニーズの聞き取りなどに協力することも多くなったという。同課の高久祐一課長は「町としても貴重な人材で、知識とスキルをいただけたらと思っていたところに新しく国の制度ができた」と話した。
地域活性化起業人(旧地域おこし企業人)制度は、地域の課題解決に民間企業のノウハウや知見を活用しようと総務省が14年度に創設した。地方自治体が3大都市圏に所在する企業と協定を結んで社員を一定期間(最長3年)受け入れ、国は特別交付税措置で財源を支援する。
更に24年度からは企業派遣型に加え、民間企業の社員に地方自治体での副業を後押ししようと、社員個人の副業型の協定制度がスタート。受け入れ自治体ではリモートを含め月に4日計20時間以上勤務し、月に1日以上滞在することが要件で、国は副業期間中の経費や交通費(上限合計200万円)を補助する。自治体のウェブサイト管理などリモート対応が可能な分野で、技能のある都市部の人材が働くケースなどを想定している。
一方、平山さんが勤める東京海上日動火災保険は21年、働き方改革の一環で社外副業の運用ルールを緩和し、より副業しやすい環境が整った。
平山さんの任期は年度末までで、満了後は延長予定(最長3年)。2地域居住に関する相談業務や関連セミナーへの登壇を予定している。【藤田祐子】
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