(ブルームバーグ):政府は29日、2025年度に国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)が黒字化するとの試算を公表した。同年度までのPB黒字化を掲げている岸田文雄政権にとって、目標の達成が初めて視野に入ったことになる。

同日の経済財政諮問会議で示した。1月時点の試算では、成長実現ケース(実質成長率2%程度、名目3%程度)で25年度PBは1兆1000億円の赤字だったが、基調的な税収増を想定するなどの見直しを踏まえて8000億円の黒字に改定した。同年度の税収は76兆8000億円と、過去最高だった23年度(72兆761億円)をさらに上回る水準を見込む。

岸田首相は同会議で、25年度のPBが「黒字化する姿が示された」と指摘。経済あっての財政との考え方の下、前提となる民需主導の成長実現へ「消費回復に必要な物価上昇を上回る所得・賃金の拡大への取り組みを確実に実行する」と語った。デジタルとAI(人工知能)による生産性向上、官民連携の戦略的投資などで経済成長を確実にすると共に、財政健全化の努力を継続するとも述べた。

PB黒字化は「10年代初頭」の達成を掲げた02年以降、歴代政権が財政目標としてきた。急速な少子高齢化で社会保障費が膨らむ中、財政健全化は喫緊の課題で、今回初めて25年度に達成する姿が示せたことは財政の信認につながる可能性がある。ただ、日本銀行の金融政策正常化で訪れる「金利のある世界」では、利払い費を含めた財政規律が一層問われることになり、今後の目標設定が焦点となる。

PBは、社会保障や公共事業といった政策的経費を税収などでどれだけ賄えているかを表す指標で、PBの赤字は必要な歳出を一部借金に頼っている状況を指す。

財政の健全性を測るもう一つの指標である「債務残高対国内総生産(GDP)」の比率は、高成長シナリオの下では順調に低下していくが、低成長ケースでは上昇経路をたどる結果となった。

これらの試算を踏まえて諮問会議の民間議員は、政府が秋に策定を目指す経済対策について、財政措置の執行が25年度にずれ込めばPBの悪化を招くと指摘。経済対策では真に必要な政策に集約すべきことや、規模ありきで予算を計上しないことなどを求めた。

--取材協力:萩原ゆき.

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