日本銀行の植田和男総裁は19日(日本時間20日)、米ワシントンで講演し、一時的要因を除いて基調的に物価が上昇し続ければ「(追加で)金利を引き上げる可能性が非常に高い」との考えを改めて示した。具体的時期は言及しなかった。外国為替市場では日米の金利差が意識され記録的な円安が進んでおり、追加利上げを巡る発言に市場の関心が高まっている。
植田氏は講演で、足元の物価上昇率は日銀が物価安定の目標とする2%を下回っているため「緩和的な金融環境が必要だ」と訴えた。その上で「(金利操作などの)政策変更が経済と物価に及ぼす影響を慎重に評価する必要がある」とした。
日銀は3月に大規模な金融緩和策の柱であるマイナス金利政策を解除しており、その影響を見極めるため、今月25、26日の金融政策決定会合では政策金利を0~0・1%とする現行の金融政策を据え置く公算が大きい。
ただ、併せて公表する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、新たに示す令和8年度の消費者物価指数(除く生鮮食品)上昇率の見通しを日銀が目指す前年度比2%程度とし、「2%目標」が達成できるとの見方を示す方向だ。
日銀はマイナス金利の解除後も当面は緩和的な金融環境を保つ考えを示しており、金利が高く運用に有利なドルが買われて円安が進む。中東情勢の緊迫化による原油価格の高騰も物価高を後押ししており、市場は会合後の植田氏の記者会見で追加利上げの時期が示唆されるかに関心を寄せる。
ただ、日銀は賃金と物価がそろって上がる〝好循環〟を追加利上げの判断材料として重視しており、消費の動きを見ながら、慎重に実施の時期やペースを見極めたい考えだ。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「円安が進めば日銀は追加利上げの時期を早める。時期は最短で今年9月になるだろう」との見方を示す。(宇野貴文)
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