7月25日、ビール世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)は五輪協賛企業として積極的に販促活動を展開し、新発売の「コロナ・セロ(Corona Cero)」をノンアルコールビール市場世界一の座に押し上げようとしている。写真はコロナ・セロの缶。シウダーフアレスで24日撮影(2024年 ロイター/Jose Luis Gonzalez)
<国際オリンピック委員会と最高位スポンサー制度の契約を結んだABインベブ。新発売ノンアルビール「コロナ・セロ」で世界一の座を狙う>
ビール世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)は五輪協賛企業として積極的に販促活動を展開し、新発売の「コロナ・セロ(Corona Cero)」をノンアルコールビール市場世界一の座に押し上げようとしている。ただ、今のところコロナ・セロは首位を走る「ハイネケン0.0」に大きな差をつけられている。
ABインベブはコロナ・セロのブランド強化に向けて、地域ごとにブランドを展開していた従来の戦略を転換。1月に国際オリンピック委員会(IOC)と最高位スポンサー制度「TOPプログラム」の契約を結んだ。
ABインベブのマーケティング責任者であるマルセル・マルコンデス氏は、五輪の協賛企業になることでコロナ・セロの販売を拡大する基盤が手に入り、より積極的なキャンペーンが可能になる、と意義を強調した。
ABインベブは契約の一環として、五輪をイメージしたパッケージでコロナ・セロを販売するほか、40カ国余りでテレビとインターネットを使った広告キャンペーンを展開。さらに、コロナ・セロの名を冠した競技のハイライト番組をおよそ15カ国で毎日放送する予定だ。
マルコンデス氏は「ゲームの主導権を握る。コロナ・セロをノンアルコールビール市場のトップに立たせるつもりだ」と語る。
もっとも、コロナ・セロは多くの市場で新規参入者。急成長するノンアルコールビール市場で競合ブランドとの戦いが避けられない。
ノンアルコールビールはメーカーにとって売上高に占める比率こそ小さいが、経営戦略上重要な製品だ。新たな市場を広げ、健康志向の高まりを背景としたアルコール消費量減少の影響を和らげることができるからだ。
<高い利益率>
コンサルティング会社ファーストキーコンサルティングのシニアアドバイザー、ジョージ・クロフト氏によると、ノンアルコールビールは利益率が高めになる傾向がある。初期投資が必要で、生産コストもやや高いが、アルコール飲料のように高い税率を課せられることがない。
コロナ・セロの最大のライバルは、2023年に欧州連合(EU)と米国で首位だったハイネケン0.0。他の大手メーカー、小規模な独立系醸造メーカーも力を入れている。
ABインベブの株主であるアビバ・インベスターズのポートフォリオマネージャー、エド・ケヴィス氏は、ABインベブは法人客向けの販売アプリを持っていることが利点だと指摘する。取引先はこのアプリやABインベブのデジタルプラットフォームを通じて五輪の無料チケットを手に入れることができる。
<契約は高額>
ABインベブは五輪のスポンサー料の金額を明らかにしていない。ただ、スポーツマーケティングを手掛けるインフロントのシニアバイスプレジデント、マイケル・ウィッタ氏によると、こうした契約の金額は通常1000万ドル単位だという。
ABインベブの契約はパラリンピックを含め、ロサンゼルス大会が行われる2028年まで。同社のマルコンデス氏は、ビール市場で高い成長を続ける「コロナ」ブランドの強みを活かしたいと話す。
カナダでは、発売から2年程度で売上高と販売量でプレミアムノンアルコールビール市場のトップに立ったという。
酒類販売を手掛ける英LWCドリンクスの幹部は、コロナ・セロが英国で急成長しているとし、「ハイネケンは以前ほど支配的な立場ではない」と語る。
ABインベブに投資しているアラン・グレイのポートフォリオマネージャー、ジテン・ピライ氏は、急成長市場では必ずしもブランド同士が競争を迫られることはないとしつつ、ABインベブは強力なブランドと巨大な流通インフラを保有しており、かなりの挑戦者だと指摘。「競合する新手企業の規模が大きい場合、市場で先行していることによる優勢性はそれほど大きくない」と今後に期待を示した。
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