インターハイの男子サッカーが福島県で開幕しました。こうしたスポーツイベントと、復興関連施設を巡る震災観光を組み合わせた福島県の新たな取り組みを取材しました。

 全国から52校が出場する男子サッカーは、暑さ対策などのため今年から開催地が福島に固定されました。

 開会式は屋内練習場で行われていますが、このJヴィレッジ、東京ドームおよそ10個分の広大な敷地にサッカーコート10カ所など様々な施設がそろっています。

 原発事故では作業員の拠点として利用されたJヴィレッジ。5年前にスポーツ施設として復活し、東京オリンピック、聖火リレーのスタート地点になりました。

全国高校総体サッカー競技大会 田野入清明福島事務局長
「地元の方々は(震災復興で)助けてもらったという思いもあるからそれに対する恩返しという気持ちもあると思うし、これだけ復興したということをPRする機会」

 大会期間中は、選手や関係者らおよそ5万人が集まり、大きな経済効果が期待されています。

インターハイ宿泊施設を経営 吉田健太郎さん
「震災で観光する方は少なくなってしまったが、かなり経済効果を受けていると思う」

 福島県はスポーツの合宿の誘致にも力を入れていますが、「ホープツーリズム」と呼ばれる独自の観光政策を進めています。

 3・11、あの時ここで避難を呼び掛けていた消防車が津波によって変形し、現在も残されています。

 世界で唯一、大津波と原発の事故に直面した地域を巡ることで、復興の現状や教訓を知ってもらう、いわば“震災観光”です。

 ホープツーリズムの拠点であるこの施設では、震災を体験した人たちと対話することもできます。

震災体験の“語り部” 高田求幸さん(86)
「私は身内を叔父叔母も含めて十数名、震災で亡くしている」

 ホープツーリズムには、2023年度、過去最多の396の団体が参加しましたが、全国から多くの人が集まる今回のインターハイを大きなチャンスと捉えています。

原子力災害伝承館企画事業部 佐藤伸司部長
「災害に対してどのような備えをしておけばいいのか。実際に見て、ここで何があったのか。そして今どうなっているのかを感じていただきたい」

 27日からJヴィレッジを発着点とする新たなツアーも始まりました。高校生らが被災地の現実を見る貴重な体験になりそうです。

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