対戦型テレビゲームをする人たち(写真はイメージ)=平川義之撮影

 歴史的な円安は、世界中にファンを抱える国内主要ゲーム会社の経営にとっても追い風だ。日本で開発したゲームソフトを海外の顧客に販売すればするほど、業績が押し上げられるためだ。一方で、手放しでは喜べない事情もあるという。

 ニンテンドースイッチやマリオシリーズなどが好調な任天堂の2024年3月期連結決算は、円安による350億円の押し上げ効果で、営業利益は前期比4・9%増の5289億円だった。プレイステーション5を軸とするソニーグループのゲーム事業も、24年3月期の営業利益(2902億円)における円安効果は前期比386億円増。売上高(4兆2677億円)ベースでも同2789億円増だった。

 市場関係者は「ハードのゲーム本体機も強みとする任天堂とソニーは、海外で生産した本体機を外国の顧客に販売している。円換算にすれば、数字が膨らむ」と指摘する。

 ゲームソフトに特化する企業では円安はさらに追い風だ。国内で開発したソフトを米ドルやユーロの価格帯で販売すれば、円換算した際の利幅は大きくなる。バイオハザードやモンスターハンターなどで知られるカプコンの24年3月期連結決算の営業利益は、円安効果が80億円強あった。パワフルプロ野球シリーズなどのKONAMI(コナミ)グループは具体的な金額は非公表としたものの「グローバル展開しているタイトルも多くあり、円安は売上高の伸長要因となった」とする。

 一方、円安で新たな課題も生じている。海外と国内でゲーム本体機の価格差が生じることで、転売目的で購入される可能性も高まっているのだ。ニンテンドースイッチの米国価格は通常モデルで299・99ドルで、円換算(1ドル=155円)すると約4万6000円。国内の販売価格は約2万9000円(税抜き)のため、価格差は約1万7000円にのぼる。プレイステーション5も同様に約1万7000円の価格差があった。欧米からの外国人観光客にとっては自国よりも日本で買う方が割安になることから、転売目的で複数台購入するケースも出ている。

 外国との価格差が日本の商品価格の引き上げを後押しするとの見方もある。ゲーム業界の事情に詳しい東洋証券の安田秀樹シニアアナリストは「半導体などドル建てで取引する主要部品が円安で値上がりし、次世代機の国内価格の値上げにつながりうる。25年3月までに発表が予定されているニンテンドースイッチの後継機種の価格が高めに設定される可能性もある」と指摘する。【杉山雄飛】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。