(ブルームバーグ):トランプ前米大統領が共和党副大統領候補にバンス上院議員を選んだことから、トランプ氏がホワイトハウスに返り咲いた場合、企業の合併・買収(M&A)担当者が予想しているよりもはるかに厳しい姿勢が打ち出される可能性がある。

バンス氏の反トラスト法(独占禁止法)に関する立場は、全米商工会議所などが支持する共和党の伝統的な緩いアプローチとは相いれない。同氏は合併の際の提出要件の厳格化を支持しているほか、大型合併の税優遇措置を廃止する法案に署名している。

バンス氏はまた、日本製鉄によるUSスチール買収計画など外国企業による米国メーカー買収や、メタ・プラットフォームズによるインスタグラムやワッツアップの買収を含む巨大テクノロジー企業の取引に懸念を示してきた。

保守パートナーシップ研究所のプログラム担当バイスプレジデント、レイチェル・ボバード氏はバンス氏について、「『共和党は企業パワーの党派的な盾となるために存在する』というここ30年のコンセンサスの中で育ってきたわけではない」と述べ、「共和党の伝統的な立場は脅かされている」と指摘した。

バイデン氏を批判するバンス米上院議員


ミシガン州立大学のアダム・キャンデューブ教授(法学)は、バンス氏起用は共和党内にM&Aを巡るより大きな対立が存在していることを浮き彫りにすると指摘。現在の緊張関係は「企業規制をはなから否定する商工会議所と、このより新しいアプローチ」との間で生じているとの見方を示した。

バンス氏は2022年の選挙で上院議員に初当選して以来、大型合併の税優遇措置を廃止する法案提出のため民主党議員と手を組んできた。昨年の夏に反トラスト法の執行を担う米連邦取引委員会(FTC)に寄せたコメントでは、M&Aを検討する企業が提出を義務付けられる詳細情報の改定案を示したFTCと司法省を称賛した。

この合併審査の変更は最終決定に至っていないが、プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社の業界団体、アメリカン・インベストメント・カウンシル(AIC)を含む数十の業界団体から非難を浴びた。

メタがフェイスブックとインスタグラムの双方を所有すべきかどうかやグーグルがユーチューブを買収する必要があったかを巡り疑問を呈したバンス氏は、巨大テックに異議を唱え、グーグルの人工知能(AI)プロジェクトについても懸念を示した。

バンス氏はFTCのカーン委員長も称賛している。カーン氏はバイデン政権下で反トラスト法の執行を強化。また、取引に対して過去最多の異議申し立てを行い、商工会議所などの反発を買った。

原題:Trump’s Vance Pick Is a Warning That M&A Won’t Get an Easy Pass(抜粋)

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