「思い通りの結果にならないと罵倒する」――。顧客によるこうした迷惑行為「カスタマーハラスメント(カスハラ)」をこの1年間で受けたとする企業が約16%に上ることが、帝国データバンクの調査で判明した。業界別では小売業の34・1%が最多で、個人との取引が多い業界で被害に遭う確率が高い傾向が浮き彫りになった。
帝国データバンクは6月17~30日、カスハラ行為による被害が直近1年以内であったかを調査し、1万1068社から有効回答を得た。被害があると回答したのはこのうち15・7%に上った。規模別では大企業(21%)が中小企業(14・8%)、小規模事業者(14・4%)よりも多かった。
業界別では、小売業に次いで金融(30・1%)が多く、不動産(23・8%)、サービス(20・2%)が続いた。建設(14・5%)や運輸・倉庫(12・9%)などは全体平均を下回った。
企業からは「自分のわがままを押し通そうとし、思い通りの結果にならないと罵倒する年配の方が多い」(金融)、「近年はネットに書くと脅されるほか、一方的に事実無根の悪評を書き込まれ、対応に苦慮している」(小売り)などの声が寄せられた。
カスハラ対策で何らかの取り組みがあると回答した割合は50・1%だった。対策の中身は「顧客対応の記録」が20・1%で最多。「カスハラを容認しない企業方針の策定」も12・3%と広がりを見せた。大企業では「被害者への相談・通報窓口の設置」が15・5%に上った。「カスハラをしてきた企業との取引を停止している」(建設)という企業もあった。
帝国データバンクは「被害を受けた企業だけでなく、まだ受けていない企業でも対策などを整える必要があるだろう」とした。
厚生労働省は2019年に労働施策総合推進法を改正し、企業によるパワーハラスメント対策を義務化。カスハラ対策も義務付ける方向で調整を進めている。22年2月には、カスハラ対策に関する企業向けマニュアルを作成。顧客などからのクレーム・言動のうち、「要求の内容の妥当性に照らして、要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により労働者の就業環境が害されるもの」と定義している。【中島昭浩】
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